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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 138

八潮の声で、洋介ははっと我に返った。彼女が指さす方を見ると、やや離れた場所の地面にコンクリートが打たれ平らになっている。と言ってもその面積は滑走路にしては狭すぎるから、ヘリポートなのかも知れない。例の飛行機はその上に静止していた。すでにエンジンは止まっているようだ。
「何をしているんですか? 早く寄せなさい」
「「くっ……」」
八潮の指示で、メイド達は一輪車を飛行機の方へと押していく。そして彼らがヘリポート(?)の上にたどり着いたとき、飛行機の操縦席を覆うドーム状の窓がプシューと音を立てて開いた。
中から黒いジャケットを着たパイロットが姿を現す。口元以外が隠れるヘルメットを着けているので顔は分からないが、どうやら女性のようだ。洋介は挨拶した方がいいだろうかと迷ったが、八潮も郷子も黙っているので、結局大人しくしていることにした。
ウイイン……
やがてかすかな機械音とともに、機体の側面、操縦席の下辺りにコの字型の小さな枠が、縦方向にいくつも現れた。多分降りるための足場だろう。さらに下の方からは、梯子が伸びて地面まで達する。パイロットは操縦席から身を乗り出し、それらを伝って降り始めた。
完全に地面に降り立ったところで、おもむろにヘルメットを取り外す。素顔を露にしたパイロットは、ハリウッド映画にでも出てきそうなブロンドの美女だった。
「うわあ……」
飛行機の操縦者というイメージからかけ離れていることもあって、洋介は思わず感嘆の声を漏らしてしまう。
ガツッ!
「いだっ!?」
不意に洋介の後頭部に、固いものが激突した。何が気に入らないのか、八潮が肘を振り下ろしたのである。
「洋介様、あちらはグレイシア・カーチスさん。木之花財閥私設航空隊のパイロットです」
「はあ、ど、どうも……」
何事もなかったかのように、八潮がブロンドの女性を紹介する。洋介はただ、グレイシアと呼ばれた女性に挨拶するしかなかった。
「はっ!」
続いて掛け声とともに、八潮が一輪車から飛び降りる。華麗な着地を披露した彼女は、そのままグレイシアの方へと歩み寄って話しかけた。
「ご苦労様です。カーチスさん。あちらが……」
「『木之花』洋介様ですね。お目にかかれて光栄です。グレイシア・カーチスであります!」
流暢な日本語で自己紹介し、洋介に向かって敬礼するグレイシア。それはいいのだが、何か情報がおかしくないだろうか。
「は、初めまして。『中村』洋介です……」
洋介は見よう見真似の敬礼を返しつつ、さりげなく訂正する。だがグレイシアを含め、誰も反応しなかった。
(洋介学って、ちゃんと俺のこと伝えてるのかな……?)
疑問に思う洋介を他所に、八潮は次の行動に移っていた。まず例の踏み台を持つメイドに向かって顎をしゃくり、一輪車の脇に置くよう命ずる。命令されたメイドは、しぶしぶ踏み台を洋介の足元に設置した。
「洋介様、こちらへ!」
「え? あ、はいっ!」

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