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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 137

「何故そこに!?」
「それより、あれをご覧ください」
八潮は洋介の頬に手を添え、彼の顔を動かして別の方向に視線を向けさせた。洋介がそちらを見ると、例の飛行機が機首を前に向けたまま、ゆっくりと降下していくところである。
「着陸するんですね……」
「その通りです。では参りましょう!」
勢いよく宣言する八潮。片手で座席の背もたれを持ってバランスを取りながら、もう片方の手で飛行機が降りて行った方向を指す。飛行機はすでに着陸したようだったが、森が邪魔になっていて、その様子を見ることはできなかった。
「さあ、早く出しなさい」
一輪車を支えるメイドを八潮がせっつく。それを聞いた郷子は、さすがに不満の色を露わにした。
「ちょっと、何故あなたがそこに乗るんですか? それに洋介様のご移動を仕切るのは私の役目で……」
「どうして洋介様は、こんなお姿なんでしょうね?」
「ぐくっ……」
洋介の毛布を指でつまみながら、嫌みたらしい口調で八潮は郷子に問いかけた。誤魔化されたと見せかけて、実は全然忘れていなかったのである。
しかも八潮は、おそらく最初から真相に気付いているのだろう。さらにそれを全力で利用しているのだから、かなり底意地が悪かった。
「…………」
そうと分かっていても、郷子には成す術がない。彼女は部下達に目くばせをし、八潮に従うよう促す。後でブチ殺すから、今は我慢しておきましょう。そんな郷子の心の声を、洋介は確かに聞いたような気がした。

…………

数分後、洋介一行は飛行機の着陸した方へと向かっていた。これまでにメイド達は何度も一輪車を揺らし、八潮だけを振り落とそうと試みていたが、今のところ成功していない。
「あっ、ああん!」
「ひ……ちょっと……」
それどころか、八潮は揺れを利用して洋介の後頭部に何度も自分の胸を押し付ける。それを見たメイド達は、企てを中断するしかなかった。
(助かった……)
一輪車が揺れなくなり、洋介は安堵する。何度も揺さぶられたせいで、今度こそ酔いそうになっていたのである。
そんなことをやっているうちに、洋介達は海岸近くまで進出していた。洋介の視界の下半分に、眼の醒めるようなコバルトブルーの海が広がる。彼の知る日本の海とは、また違った美しさであった。
「う〜ん。いいねえ……んっ?」
洋介はふと、沖合いに一隻の船が浮かんでいるのに気付いた。どこかで見たような船だと思ったら、洋介を乗せてこの島に運んできた、あの船である。何故かタグボートに引っ張られ、船体の右側をこちらに向けながら移動していた。
(そうだ。昨日まで、あれに乗ってたんだよな……)
救命ボートの設置場所に一つ分空きがあるのを見て、洋介は苦笑した。いろいろなことがありすぎたせいで、乗船していたのがずいぶん前のことのように思える。
「洋介様、あそこです!」
「えっ?」

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