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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 136

どうやら八潮は、うやむやに済ませる気が全くないらしい。洋介は助けを求めようと郷子の方を見たが、彼女は絶句して固まっていた。どうやら洋介との痴態を貪るのに夢中で、後のことを全く考えていなかったようだ。まずいことになったと洋介は思った。このままでは風力発電所での修羅場がリプレイされてしまうかも知れない。
(それだけは何としてでも避けないと……)
何とか乗り切る方法はないだろうか。全身から脂汗を流しつつ洋介は苦悩する。そのときであった。洋介の耳にどこからか爆音のようなものが響いてきたのである。
(はっ! これぞ天の助け。今日の俺は神に愛されている!)
舞い上がった洋介は、自分を見つめている八潮に向って非常な勢いで疑問をぶつけた。
「この、この音は何ですか!?」
「はい?」
洋介に言われて、ようやく八潮は音に気付いたようだった。彼女はしばらく考え込んでいたが、やがて何かを思い出したかのように手を打った。
「ああ。あれはデモンストレーションのために呼んだものです」
「デモンストレーション!?」
「はい。やっと到着したようです」
八潮は洋介に背を向けると、額に手をかざして空を見上げ始めた。爆音を放つ物体を探しているのだろう。関係ない話題を持ち出すことで追及をはぐらかそうという洋介の作戦は、どうやら上手く行ったようだ。もっとも、デモンストレーションと聞いた彼が少々不安な気持ちになったのは否めない。今度は一体全体何をするのであろうか。
(一難去ってまた一難、にならなきゃいいんだけどな……)
やがて、洋介の目にも例の物体が見て取れた。形を見るに小さ目の飛行機らしい。けたたましいエンジン音を響かせながらこちらへと近寄って来る。
「戦闘……機?」
誰にも聞き取れない程度の小声で、洋介はつぶやいた。飛んでくる飛行機は三角形の翼をしており、ニュースや映画で見る戦闘機に似ていないこともなかったのである。もちろん軍事マニアでも飛行機狂でもない洋介に、詳しいことは分からないのだが。
ともあれ、正体不明の飛行機はとうとう島の上空に差し掛かった。どうしたことか、見る見るうちにスピードが落ちていく。
(大丈夫なのか?)
と洋介が思ったのも束の間、飛行機はとうとう空中で完全に停止した。
「え!?」
どうなってるんだ、ヘリコプターじゃあるまいし。あっけに取られる洋介の耳元で、八潮がささやいた。
「あれは木之花財閥、私設航空隊の飛行機です。特殊な構造になっていまして、ジェットエンジンの噴射口を動かして下に向けることができます。そのため滑走路がなくても、垂直に離着陸できるのです」
「へえ、そうなんですか……って、あれ?」
今、変なところから声が聞こえなかったか。怪しんだ洋介が振り向くと、いつのまにか八潮が一輪車の横棒の上に立っていた。脚立なしで登ったところを見ると、結構体力はあるらしいが……

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