PiPi's World 投稿小説

華が香るとき
官能リレー小説 - その他

の最初へ
 133
 135
の最後へ

華が香るとき 135

洋介が返事をすると、郷子は「行きましょう」とメイド達に命令を下した。それを受けて初めてメイド達は車を前に動かし始める。今更ながら洋介は、自分の移動の自由は郷子が握っているのだと実感した。
それはさておきタワーの近くまで寄ると、その周辺の地面がかなりの面積に渡って窪んでいた。その窪んだ場所に、何十何百という大きな鏡が設置されている。
「あっ……」
「太陽の光を反射する鏡でございます」
八潮が近づいてきて、洋介に説明した。
「島の景観を損ねないよう、このように見えにくくしているのです」
「そうなんですか……」
確かに、これではよほど接近しないと分からないだろう。洋介が感心していると、八潮はさらに言葉を続ける。
「世界中からVIPが訪れるリゾート地なのですから、当然のことです。もっとも風力発電所のごときはそうした配慮をしていないようですが……」
「…………」
洋介は口ごもった。華恋の見せてくれた風車が思い出される。どうやら八潮は、他の発電所にライバル意識を持っているらしい。話の雲行きが怪しくなるといけないので、洋介はあえて話題をずらすことにした。
「ところで、光を反射してどうするんですか?」
「あ、はい。あれらの鏡はコンピューターによって自動的に角度が変わりまして、反射した太陽の光が全てあの塔の最上部に当たるようになっています。そうして塔の最上部を非常な高温にするのです。目玉焼きができます」
「はあ……」
なるほど鏡は全て、機械の腕で支えられていた。見てもそれとは分からないが、太陽の動きに合わせてゆっくりと動いているのだろう。
「塔の内部には水を通すパイプがあり、下から最上部まで水を運びます。塔の最上部で水は沸騰して蒸気になります。その蒸気を地下まで別のパイプで導いて、羽根車を回して発電するのです」
「そうですか……」
相変わらず発電所についての説明は難しく、洋介は生返事を返すしかなかった。もっとも、話を逸らす目的は果たしたのでこれでいいと洋介は思う。ただ、彼自身の問題はここからがスタートだった。
「ところで洋介様……そのお姿はどうされたのですか?」
「えっ?」
洋介がギクリとして下を見ると、八潮が不審そうな表情で彼を見上げていた。まあ確かに、毛布一枚で外をうろついていたら疑念の一つも持たれて文句は言えないだろう。だが今の彼には、事実をありのままに説明できない事情があった。
「いや、これはその、大したことでは……」
「ですからどうされたのですか? もしここに来られる途中で何かトラブルがあったのなら、私にはお聞きする義務があります」
「ううっ……」

SNSでこの小説を紹介

その他の他のリレー小説

こちらから小説を探す