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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 134

しばしの混乱と休息の後、洋介は例の毛布をまとい、再びメイド達の動かす一輪車で運ばれていた。謝罪するメイドと受け答えしながら、彼は自分の意識がまだあることに軽い感激を覚える。欲を言えば胃から口に逆流したものをゆすぐ水が欲しいところだが、それは贅沢というものであろう。
(しかし、よく揺れるな……)
少し周りを見る余裕を持った洋介は、一輪車が前後左右にふら付きながら移動していることに気付く。車輪が一つしかないということの他に、メイド達が扱うのに慣れていないという理由もあるのだろう。
(船で酔わなかったのに、これで酔ったら洒落にならないな。そう言えば、今思うとあの船、まるで舵が壊れていたみたいによく揺れた。乗ってるときはそれどころじゃなかったけど……)

…………

「洋介様……洋介様……」
「はっ!」
下から呼びかける声に、洋介はふと我に返った。疲労の為か、ついうとうとしてしまったらしい。
「ご、ごめんなさい。何ですか?」
「到着いたしました。こちらが太陽熱発電所です」
「あっ……」
到着と聞き、洋介は慌てて周囲を見渡した。だがそれらしい施設は目に入ってこない。
(どこだ……?)
「あそこです、洋介様」
キョロキョロする洋介にメイドの一人が声をかけ、彼の前方を指差した。そちらを見ると、確かにそう遠くないところに塔のようなものが立っている。だがその形は古代の灯台か城の一部にしか見えず、材質も石でできているような感じであった。とても近代的な発電所の設備とは思えない。
「あれが……?」
「その通りです。洋介様」
後ろの方から聞きなれない声がした。「えっ?」と聞き返しつつ洋介がそちらを振り向くと、メイドではない女性が一人立っている。彼女は黄色い作業服のようなものを着ており、黒い髪を短くそろえていた。女性にしてはかなりの長身で、郷子にほぼ匹敵している。
「お待ち申し上げておりました。この太陽熱発電所をお預かりする、県部八潮(あがたべ やしお)と申します」
八潮と名乗る女性は、そう言うと洋介に向ってぺこりとお辞儀をした。
「ど、どうも」
洋介もつられて彼女に頭を下げる。体ごと後ろを向くことができないので、相当首を捻らなければならなかった。八潮はそのまま洋介に近づき、先程の話の続きをする。
「ようこそ太陽熱発電所へ。当発電所の施設はできるだけ島の景観を損なわぬよう、古代の遺跡に似せて建造しております」
「そうでしたか……」
どうやら本当に、前方の塔が発電所であるらしい。八潮はそちらに向かって少し歩き、振り返って洋介を誘った。
「どうぞこちらへ。近いてご覧になれば、よくお分かりになります」
「は、はい」

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