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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 131

「えっ? あの、俺は……」
自分の意図が微妙に、いや大幅に歪曲されているのに気付いた洋介は、訂正しようと口を開きかけた。だがその前にメイド達が、
「分かりました……」
「そういう事でしたら……」
「では後でじっくり……」
と納得してしまい、言い出せる雰囲気ではなくなってしまう。郷子は満足げに部下の顔を見渡し、続いて洋介に話しかけた。
「ですが、洋介様の体調に鑑みまして、徒歩で移動していただくわけには参りません。ここから先は、私共の用意する乗物に乗っていただきます。よろしいですね?」
「は、はい……」
もうどうにでもなれ。そんなやさぐれた気分で洋介は肯いた。
(まあ実際、歩かないで済むならありがたいしね……)
洋介の了承を取った郷子は、部下のメイドに目くばせする。それを受け、5人のメイドが洋介の側を離れて森の中へと入って行った。やがて彼女達はガサガサゴロゴロと、何かを引っ張り出して戻って来る。
「何じゃこりゃ……」
乗物と聞いた時、洋介はてっきり電動カーでも回してくれるのかと思ったのだが、その期待は無残に裏切られていた。メイド達が牽いて来たのは、どう見ても人力で動かしそうなローテク車両である。
その外観は、一つの大きな車輪の上に棒が垂直に付けられ、てっぺんに一人用の座席が付いているというものだった。垂直棒の中程からは前後に二本ずつ横棒が伸びていて、上から見るとXの字を縦長にしたような感じになっている。横棒の一本につき、一人ずつメイドが付いて動かしていた。彼女達は洋介の前まで来ると、棒を水平に支えたまま静かに停止する。
(まさか、あれに乗るのか、俺は……)
もちろんそのまさかだった。残る一人のメイドが遅れて戻る。彼女は折り畳み式の踏み台を持って来ていた。
「失礼いたします」
踏み台が広げられ、一輪車の傍らに設置される。郷子は躊躇なくそれを登り、洋介を頂上の座席に座らせようとした。
「ま、待ってください!」
洋介は思わず抗議していた。今の彼は全裸である。人力車ならいざ知らず、この一輪車で運搬されるのはいくらなんでも恥ずかし過ぎる。
「どうされました? 洋介様」
「あの、これに乗るのはちょっと……」
「分かりました」
郷子は意外にも簡単に承諾した……かに見えたが、
「それ程までに私の腕の中が良いと言われるなら、このままお運びさせていただきます」
やはり妥協する気は全くないようだった。彼女の脅迫に、洋介はあえなく屈服する。
「の、乗ります……」
「何か仰いましたか? よく聞こえませんでしたが」
前にもこんな文句を言ったような気がする。そんなことを思いながら、洋介は再度懇願した。
「お願いです。どうかこの車に乗せてください……」
「かしこまりました」
郷子は嬉々として洋介を一輪車の座席に鎮座させた。座らされた洋介は、やけに視点が高いと感じる。おそらく周囲からは、完全に晒し者になっているように見えていることだろう。
「では、出発です!」

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