PiPi's World 投稿小説

華が香るとき
官能リレー小説 - その他

の最初へ
 128
 130
の最後へ

華が香るとき 130

「でも……」
「それよりも洋介様」
郷子は華恋に関する話を強引に打ち切り、別の話題を振って来た。
「このような危険な場所にお連れして申し訳ありませんでした。ツアーは直ちに中断いたします。それで……この後の時間ですが、この近くに小さな保養所がございまして、洋介様さえよろしければそこへご案内させていただきます。私共一同、精一杯おもてなしいたしますので、ゆっくり疲れをお取りになってください」
「はあ……」
洋介がよければと断ってはいるが、実際には決定事項を告げるような郷子の物言いである。部下のメイド達に至っては「おもてなし」の内容に思いを馳せているのか、早くも目を輝かせたり息を荒くしたりしている。洋介の疲れを取る気などサラサラないのは一目瞭然だ。
「え、ええと……」
そんなメイド達の雰囲気に、洋介は一瞬流されかかった。だが危うい所で踏み止まり、果たしてそれでいいのかと考えを巡らせる。やがて結論を出し、彼は最大級の勇気を奮ってそれをメイド達に伝え始めた。
「あの……申し訳ないんですけど、発電所の人達が準備してくれてるって事なんで、今日はそっちの方に……」
郷子に抱かれたままという情けない体勢である事を度外視し、洋介は(彼にしては)きっぱりと謝絶の言葉を口にした。
(俺のせいで伊予野さん達が大変な事になったんだから、ここで逃げる訳には行かないよな……)
こうなったら何がどうなろうとツアーを最後まで制覇する。それが洋介の考えた、自分なりのけじめの付け方であった。
もっとも風車に吹き飛ばされ、空中で揉みくちゃにされた彼の頭脳が果たしてクリアーであったかについては、執筆担当者の保証する所ではない。
「まあ……」
ともあれ、洋介の返答を聞いた郷子は口を半開きにして驚きを表現した。他のメイドに関しては、落胆する者が半分、怒り出す者が半分といった様子である。
「いけません! 洋介様!」
「洋介様はとにかく私達の言う通りにすればいいんです!」
ここまで本音垂れ流しだと、ある意味清々しいものがある。洋介はしばしの間、感慨にふけらざるを得なかった。だが彼を抱える郷子が、微笑を浮かべて自分の部下達を制しにかかる。
「止めなさい、お前達」
「でも!」
「洋介様のお気持ちが分らないのですか?」
「洋介様のお気持ち……」
「そうです。洋介様は、『お前達とセックスするのはいつでもできる。でも発電所巡りの思い出を作れるのは今日しかない。だから今日は一緒に発電所を回ろう』と仰っているのです。そこまで言われてお応えできないようでは、メイドの名が廃ります」

SNSでこの小説を紹介

その他の他のリレー小説

こちらから小説を探す