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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 128

郷子は洋介をお姫様抱っこしたまま、にこりと微笑んだ。メイド達がスクラムを解いた後も、彼女はなかなか洋介を下ろそうとしない。だんだん恥ずかしさがつのってきた洋介の回りに、メイド達がざわざわと集まってきた。
「この恩は大きいですよ、洋介様……」
「そうです。私達を洋介様専属のメイドにしてもらってもいいくらいです」
メイドの一人が恩着せがましい口調で言い、他のメイドがそれに同調する。郷子は「ちょっと止めなさい、あなた達……」とたしなめるが、目が笑っていて全く説得力がなかった。
「え、ええと、その……」
何と答えていいか分からない洋介が口ごもっていると、郷子が話しかけてきた。
「洋介様、皆が勝手なことを言って申し訳ありません。ですが……今回の恩賞として私達を洋介様専属にしてくだされば、それに勝る喜びはありません。できればその上でメイド長を更迭していただいて、地球の裏側あたりに左遷してくださると……」
ひたすら洋介に救助の見返りを強要する郷子一党。だがやはり洋介としては、
「はあ……」
「検討させていただきます……」
などとお茶を濁すしかなかった。
(助けてくれたお礼はしたいけど、メイドさんを選んだり、雪乃さんをどうにかしたりなんて、俺にできるわけないし……)
困惑していると、「あ、あの……」というか細い声が横から聞こえてくる。洋介がそちらを見ると、華恋が顔面蒼白になってガタガタと震えていた。
「伊予野さん……」
「まだいたんですか? 伊予野所長」
郷子が冷ややかな声を出した。華恋を見る目つきは、あたかも風呂場に発生したカビでも見るかのようである。が、華恋はそれに構わず土下座して洋介に詫び始めた。
「申し訳ありません洋介様! こんなはずでは……」
「あ、あの……結局怪我もなかったんだし、俺は……」
「大失態ですね。伊予野所長」
洋介の台詞をさえぎり、郷子はあからさまに華恋をなじった。先程の意趣返しのつもりなのかもしれない。
「洋介様を歓待すると言っておきながらこの不始末。私達がいなかったらどうなっていたことか……」
「あなたには話していません。デルフリンゲルさん」
ようやく華恋が郷子に反応し、不機嫌そうに睨みつけた。そんな華恋を郷子は鼻でせせら笑う。
「フッ……そんなことを言っていいのかしら? このことが桜様の耳に入れば、良くて島の外への配置換え。いずれにせよ、二度と洋介様にお会いする機会はないでしょうね」
「うっ。そ、それだけは……」
華恋の顔に、目に見えて動揺が走った。洋介が郷子の腕の中から、「あの、ちょっといいですか?」と発言を求めるが、全く無視されて終わってしまう。
「とはいえ、私も鬼ではありません」
「どういう意味ですか……?」
郷子が意外な発言をすると、華恋は不審そうな態度で質問した。続けて郷子が返答する。

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