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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 127

どうしたらいいのか聞きたい所だったが、華恋が携帯電話を取り出したので成り行きを見守る事にした。通話を始めた彼女は早く止めるようにと指示を飛ばす。だが次の瞬間にその口から漏れ出たのは、洋介の不安の炎にガソリンとニトログリセリンを注ぐ言葉であった。
「何ですって!? 制御が効かない!? ハッキングってどういう事!?」
その間にも風車の回転数は増していた。もはや目で見ても分からず、騒音とやって来る風の強さからそれと分かるレベルである。
洋介はだんだん立っているのが辛くなり、前傾姿勢で耐え始めた。180センチの長身が災いし、他の者より風を受ける面積が広いのだ。横を見ると華恋もまた、風に流されないよう両足を踏ん張っている。彼女は果敢にも制御室との連絡を取り続け、事態の打開を試みていたが一向に解決する気配はない。
(これは、もう駄目かも……)
全身を烈風に煽られ、洋介はのっぴきならない事態になったと感じていた。地面に伏せようにも風圧で前には倒れられず、後ろや横にのけぞれば体を持って行かれそうな勢いである。
さりとてこのまま立ち続けていても、風がさらに強まれば吹き飛ばされるのは必定だろう。洋介は華恋や郷子達、それに自分の命の危険を意識せざるを得なかった。だがその時、彼の脳天にどこからともなく妙案が舞い降りる。
(そうだ! 回っているのはあの風車だけだから、横に動けば風から逃げられる!)
打開策を思いついた洋介は、まず近くにいる華恋を安全圏に連れ出そうと試みた。彼女の方を向いて左手を伸ばしかける。しかしながらその行動は、いささか遅きに失していた。一際強くなった風によって、とうとう洋介は押し倒されたのである。
「うわっ!」
次の瞬間、彼の両足は地面から引き離された。「洋介様っ!」という華恋の悲鳴が聞こえたような気がするが、よくは聞き取れない。体が宙に浮き、ぐるりと縦に回転した。どちらが上か下か分からなくなった洋介の手から毛布がもぎ取られ、どこへともなく飛んでいく。
「ひいっ!」
このまま地面に叩きつけられる。そう覚悟した洋介だったが、そうはならなかった。いつの間にかメイド達が洋介の後ろでスクラムを組んでいて、先頭の郷子が飛んできた洋介の体をしっかりと受け止めたのである。
「郷子さん……」
「もう大丈夫です、洋介様!」
ちょうどそのときを境に、吹く風が弱くなり始めた。風車の回転が遅くなってきたのだ。見る見るうちに減速し、やがて停止する。
「もう大丈夫です、洋介様。お怪我はありませんか?」
「は、はい……おかげで助かりました」
「よかった。お助けすることができて……」

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