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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 124

洋介のおかげで難を免れた郷子達は、一斉に彼に飛び付こうとした。だが華恋にひとにらみされ、あえなく中断する。さしもの彼女達も、ここは自重のし所だと思ったらしい。
後になって考えてみると、ここが洋介の運命の分かれ道だった。
このタイミングで「それじゃ、次の発電所に行きましょうか?」と言っていたら、どうにかなったかも知れない。が、代わりに彼が口にしたのは次のような言葉だった。
「そう言えば、何かデモンストレーションを見せてもらえるとか……」
言われた華恋は、ハッとしたように洋介の方を振り向いた。
「ああ、すっかり忘れておりました! 申し訳ありません」
彼女は再び携帯電話を取り出し、誰かと会話を始める。ひとくさり何事かを話した後で一旦切り、由衣に向かって話しかけた。
「それじゃ由衣、頼むわね」
「はいっ! お任せください!」
「えっと、あの……」
洋介が声を掛ける暇もあらばこそ、由衣は風車の方へと走って行ってしまった。よく見ると、風車の側には小さな四角い建物がある。
(さっきは気が付かなかったけど、元町さんはあの建物から来たんだな。多分あそこで発電所の管理をやってるんだろう……)
洋介がそんな事を思っていると、華恋が声を掛けて来た。
「もう少々お待ちください。今準備を整えていますので」
「は、はい……」
やがて由衣はその建物に到着し、扉から中に入る。それからほとんど間を置かずに、華恋の携帯電話が鳴り出した。
「由衣、準備はどう? 電圧の調整は……」
今度の会話は少々長かった。なかなか終わらない。一方で郷子達は、洋介や華恋から少し離れた所に小さく固まっている。彼女達は額を寄せ合い、
「ハッキングの方は……」
「完了しています。全て……」
等とひそひそ声で話していた。だが風上に立っている洋介や華恋の耳に、その声が届く事はない。話す相手がいなくなり暇になった洋介は、再び風車の群れを眺め始めた。
するとその中の一台だけ、急に回転のスピードが落ち始める。やがて完全に停止してしまった。
「ん……?」
故障だろうか。それとも点検のために止めたのか。華恋の電話が終わったらちょっと聞いてみよう。そんな悠長な事を洋介が考えていると、いきなりとんでもない事が起こった。
ガクン!
何としたことか、その風車は支えるタワーごと、洋介達の方へと倒れ掛かって来たのである。
「危ない! 倒れる!」
洋介は絶叫した。びびってたじろぐ所の騒ぎではない。タワーの高さからしてここまで被害は及ばないだろうが、それでも大事故には違いなかった。全身から冷や汗がどっと噴き出す。
だが華恋も郷子を始めとするメイド達も、全く慌てる様子を見せない。変に思った洋介が恐る恐る後ろを振り返ると、風車は少し傾いた状態で停止していた。
「止まった……?」
「驚かせて申し訳ありません、洋介様」

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