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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 123

風車を支えるタワーの根本が黒い布のような物で覆われているのだ。風力発電の事はよく知らないが、何か意味があるのだろうか。
「あの、あれは……」
その事について洋介が質問しようとした時、いきなり背後で声が上がった。
「洋介様ーっ!!」
「えっ?」
何事かと洋介は振り向いた。見ると郷子達がこちらに向かって走って来る。洋介が最後に見た時は一人残らず全裸で失神していたのだが、今は全員がメイド服をしっかりと着込んでいた。
「郷子さん。それにみんな……」
ひょっとして、誰か自分の服を持って来てくれていないだろうか。そう内心で期待した洋介だったが、それは見事に裏切られていた。全員手ぶらである。メイド達は洋介の側まで走り寄るといきなり一斉に跪いた。
「洋介様、申し訳ございません!」
「え?」
よく分からない展開に洋介が戸惑っていると、郷子が顔を上げて口を開く。
「洋介様をご案内するという大役を仰せつかっておきながら、一人残らず気をやって肝心の洋介様を迷子にするという大失態。お詫びのしようもございません」
「いやその、俺は別に……」
「ああ。この事が桜様に知れたら私達は……」
そう言うと郷子はよよと泣き崩れた。部下のメイド達も相当不安そうだ。もっとも洋介は別に告げ口などする気はない。確かに森の中で迷いそうにはなったが、こうして事なきを得た以上事態をややこしくする必要はないだろう。
洋介はそう言って彼女達を安心させようとした。だがその時、華恋が前に進み出る。
「ずいぶんお楽しみだったようですね。デルフリンゲルさん……」
「これは、伊予野さん……」
「残念ですが、私としましては起きた事を桜様達に報告せざるを得ません」
華恋は底意地の悪い事を郷子に向かって言い放った。今までの温厚な様子が嘘のような変わりようだ。ひょっとすると洋介といい雰囲気だった所を台無しにされ、少々お冠なのかも知れない。
「そ、そんな……」
「い、伊予野さん。そう言わずに……」
郷子が途方に暮れ、洋介が慌ててとりなしにかかる。だが華恋はずいぶんと強情だった。
「何と言われましょうと、これは私の仕事の一部ですので」
「し、しかしですね。元はと言えば郷子さん達を置いて勝手に歩き回った俺が悪いんですし。ここは一つ穏便に……」
洋介は粘った。その甲斐あってとうとう華恋が折れる。
「はあ……洋介様がそうまで言われるなら……」
彼女は不承不承うなずいた。あまり意地を張って洋介の覚えが悪くなっても困ると判断したのかも知れない。事態をこじれさせずに済んだ洋介はほっと息をつく。
「ああ……ありがとうございます、洋介様……」

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