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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 122

何という偶然だろうと洋介は思った。水を求めてさまよううちに、運よく目当ての人物に会うことができたのだ。
そう。実際彼は幸運だった。歩いている時は考えもしなかったが、下手をすれば森の中で迷ってしまう可能性もあったのである。
しかし彼女達がここにいるという事は、発電所が近いのだろうか。
「それじゃ、風力発電所ってのはこの辺りに?」
「えっ……?」
洋介の言葉を聞くと華恋と由衣は顔を見合わせた。無言で左右に別れ、洋介の視界を開けさせる。
「あっ!」
洋介の目に飛び込んできたのは大きな風車の群れだった。少し離れた場所に7つ8つ居並び、皆同じ方向を向いてクルクルと回転している。支柱となる細長いタワーは高さ30メートル程だろうか。上に付いている風車の直径もそれと同じ位である。
(こんな目の前にあったんだ……)
おそらく意識朦朧としていて気が付かなかったのだろう。とは言えあれほど大きな物の存在を見過ごしていたのはいささかバツが悪かった。頭をかきたい所だが、毛布に包まった状態では困難である。
「いや、これは……」
「どうぞ。もう少し近くへ参りましょう」
赤くなってうつむいた洋介を、華恋と由衣は両脇から優しく支えた。そのまま風車の方へと導いていく。二人に誘われるまま、洋介はゆっくりと歩き出した。
「この辺りでいいでしょう」
少し歩いて華恋は立ち止まった。まだ風車までは距離があるが、これ以上近づいて見上げると首が痛くなるのかも知れない。
「何だか、静かですね……」
洋介は感想を漏らした。風車からブオンブオンという唸りは聞こえているのだが、見た目の割に驚く程静かである。音だけを聞いた洋介がもっと遠くにありそうだと錯覚したのも無理のない事だった。
「ええ。風力発電というのは騒音公害が意外と深刻なのです。この風車はこの島に設置する為に、木之花重工業が特別に設計いたしました。新開発の翼型で騒音を従来の半分以下に抑えています」
「なるほど……」
(特注するのはおまるばっかりじゃないんだな)
洋介は妙な事に感心した。華恋の説明はさらに続く。
「ここにあるのは二枚翼プロペラ型と呼ばれる形式のものです。全部で八基設置されておりまして、一基当り最大400キロワットの電力を発生いたします」
「400キロワット……」
「風速3メートル以上で発電を開始することができますが、最大の出力に達するのは12メートルの時です。35メートル以上になると危険なので、風車を止めて発電を中止いたします」
「35メートルで……」
もちろん門外漢の洋介には、華恋の言うスペックをどう評価していいのか分からない。だが彼女があまりに熱心に説明してくれるので、つい相槌を打ちながら聞き入ってしまった。
(んっ……?)
だが風車を眺めるうちに、洋介はちょっとした違和感に気付く。

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