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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 120

はっとして耳を澄ませた洋介だったが、音はすぐに止んでしまった。しかし聞こえたのは間違いない。
(ひょっとすると、近くに泉でも湧いているのかも知れない)
そう思った洋介は、疲労した肉体に鞭打って上体を起こそうとした。だが次の瞬間、水音がしたのと同じ方向からガサゴソという音が聞こえてくる。姿は見えないが誰かいるのだ。
(ま、まずい……)
そこにいるのが誰にせよ、今の自分達の姿を見られるのは避けたい所であった。洋介は体を動かすのを止めて息を殺し、音の主が去るのを待つ。
(…………)
程なくして音は聞こえなくなった。どうやら行ってしまったようだ。
(大丈夫みたいだな……)
洋介はふら付く足取りで立ち上がった。何度か倒れそうになりながらも音の聞こえた方へよろよろと歩いて行く。
(確かこっちだったはずだ……)
だが森の中を行けども行けども、泉らしい物には出くわさなかった。歩き過ぎてとうとう森から出てしまう。
「も、もう駄目だ…」
今度こそ精魂尽き果てた洋介は、うつぶせににばったりと倒れ込んだ。その途端、彼の横の方で女性の悲鳴が上がる。
「キャッ!だ、誰……?」
近くに誰かいる。その事に気付いた洋介ははっとして顔を上げた。三つ編みにした髪を左右に垂らし、大きな眼鏡をかけた女性がこちらを向いて立っている。洋介は自分が全裸である事も省みず、無我夢中で助けを求めた。
「み、水を…ください……」
「え、ええと……あ、あなたはもしかして洋介様!?」
洋介に恐る恐る近づき、彼の顔を覗き込んだ女性が驚いたような声を上げた。どうやら洋介の事を知っているらしい。洋介が力無くうなずいて見せると、彼女は慌てて携帯電話を取り出してどこかに連絡を取り始めた。



「水が飲めるって素晴らしい……」
女性が通話を終えてしばらく経つと、『お待たせしました!』という声と共にショートカットの女性がやって来た。ペットボトル入りのミネラルウォーター(1リットル)を持って来てくれたのだ。それを受け取り一気飲みした洋介は、ようやく人心地付く。ありがたい事に水だけでなく毛布が届けられていた。裸でいる洋介を見て、事情は分からないながらも配慮してくれたのだろう。
「ありがとうございました。助かりました」
渡された毛布を体に巻いてから、洋介は女性達を伏し拝むようにした。
「そんな、洋介様……」
「畏れ多いです……」
拝まれた二人は顔を赤らめて恥らう。だがしばらく経つと、眼鏡の女性の方が思い出したように一つの疑問を口にした。
「ところで洋介様は、どうして裸でお倒れになっていたのでしょうか……?」
「いやあの、それは……」
洋介はギクリとして口ごもった。状況を説明するのはそう難しくないが、ああいう事はやはりできるだけ人に言わない方がいいのではないかと迷う。それに『メイドさん達と屋外セックスしていました』と言った所ですんなり信じてもらえるだろうか。

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