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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 112




部屋に到着すると、メイド達は洋介をパジャマに着替えさせてくれた。ベッドはすでに布団からシーツから新しくされており、今朝の惨状の痕跡は微塵もない。
「はあ…」
洋介は一直線にベッドに潜りこんだ。途端に疲労感が一段と増して押し寄せる。二人のメイドに「お休みなさい」と言うか言わないかのうちに眠りに落ちてしまった。
スゥ…スゥ…
「フフ…洋介様…」
「今回はお預けですけど、次の機会には…」
二人のメイドは妙な事を言いながら、寝息を立て始めた洋介の顔をしばし鑑賞していた。
少し経つと二人は洋介が脱いだ服をたたみ、タンスにしまう。さらに何故か窓を小さく開けた。そして扉を出て持ち場へと…
戻らなかった。閉めた扉に背を向けて仁王立ちになり、あたかも歩哨のように周囲を警戒する。
そこへちょうど雪乃が現れた。扉の前に立つ二人のメイドを見つけて怪しむ。
「そこで何をしているんですの、あなた達?」
洋介がらみで何かあるのではと勘繰っているのだろう。雪乃の口調には少しトゲがあった。だが二人のメイドは怯まず返答する。
「ただ今洋介様が中でお休みなのです。お目覚めになった時のために、私達はここに控えております」
「あら、そうですの。洋介様には島内の発電所を見学していただく予定でしたけれども…お疲れなのでしたら致し方ありませんわね」
雪乃はあっさりと納得した。その行動からにわかには信じ難いが、彼女は彼女なりに洋介の健康に気を使っているのである。
「それではわたくしが添い寝でも…」
雪乃は部屋に入ろうと扉に手を掛けた。
「お待ちください!」
二人のメイドは雪乃を強く押し返した。阻止された雪乃は当然収まらない。
「何をするんですの、あなた達!!」
「なりません。洋介様は自分がいいと言うまで誰も中に入れてはならないと私どもにお命じになられました!」
もちろん洋介はそんなことは言っていない。
「あら、そうですの…?」
「そうです。例えメイド長といえどもお通しするわけには参りません!」
言い放つメイドの口調にはどこか喜色が浮かんでいた。どうもこの二人のメイド、雪乃とは折り合いが悪いようである。
「ふうん…洋介様がそんなことを……」
雪乃は雪乃で二人のメイドの言葉に疑念を抱いたという口調である。
だが部屋に押し入れば洋介の不興を買うかも知れない。彼女はそのリスクを犯さなかった。
「分かりましたわ。その代わり、洋介様がお目覚めになったらすぐにわたくしの元に報告をよこすんですのよ」
「承知いたしました。メイド長」
雪乃は引き下がった。だがその後は特に用もなさそうなメイド達が引っ切り無しに洋介の部屋の前を通りかかる。洋介が部屋から出たらすぐ報告できるよう、雪乃の息がかかった者が見張っているのだ。雪乃が二人のメイドを当てにしていないことはやはり明らかであった。

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