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柳沼隼人の場合〜人食〜
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柳沼隼人の場合〜人食〜 5

それが柏木裕子だった。善い人を演じながら、人との距離を置こうとする柳沼は裕子にとっては控え目な好青年と思えたのだ。裕子は次第に柳沼に接近していったが、人に傷つけられた野良犬が餌をもらうのを警戒するように、柳沼も裕子の態度を訝り、なるべく近付かないようにしていた。
しかし裕子は柳沼に引かれていきまた柳沼も裕子に引かれていった。二人はいつしか恋人ではないが友達として会話ができるまでになっていた。しかし柳沼は絶対に家族の事を話そうとせず裕子もそれを察して聞こうともしなかった。
柳沼は常に裕子と距離を置き、良き友人を演じ続けた。その結果、裕子は柳沼を他の軽薄な男達とは違い、理性的で紳士的な男だと思い込むようになっていた。そして、柳沼も、何かにつけて好意的な態度をとる裕子に惹かれ、次第に警戒心を弛めていったのだった。
「あの野郎・・・」!
柳沼はそう言いかけて、下半身に妙な違和感を感じた。
「た、立てない・・・!」
カンのいい人ならもう分かるだろうが、柳沼はクロイツフェルト・ヤコブ病に感染していたのである。この病気は、牛海綿状脳症に感染した牛を食べて感染すると言われているが、人食いの習慣があった民族の間でも感染があったという報告もある。つまり、この病気は、共食いという生物の倫理に反した行動をとった者への自然の報復なのだ。
「くそ・・・!どうして立てないんだ・・・!?」
 その後、腐臭に気付いた近隣住民の手によって、柳沼の遺体と被害者の遺体の一部が発見された・・・。
柳沼の遺体は火葬される予定だったが、その当日、忽然と消えていた…。
ピンポーン
「はい」
裕子はドアを開けた。するとナント柳沼が立っていた。
「!?生きてたの?」
その問いに柳沼は答えず
「…裏切り者」
柳沼は隠し持っていたバタフライナイフで裕子の腹を刺した。
「うっ!な、何するの?」
「死ね」
柳沼は裕子の全身をめった刺しにした。
「ふぅー……裕子!」
冷静になった柳沼は裕子の名を呼び続けた。が、裕子は既に息を引き取っていた。
「…裕子」
何を思ったか、柳沼は裕子の亡骸を自宅へ持ち帰った。

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