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柳沼隼人の場合〜人食〜
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柳沼隼人の場合〜人食〜 6

「裕子ごめんな、でもこれからは一緒だよ」
裕子の顔に頬擦りしながら柳沼は言った。柳沼は裕子の遺体を冷凍庫に入れた。

自然界において同属食いほど嫌悪される禁忌は無い。
親殺し子殺しも嫌悪されるだろうが自然界という絶対的な弱肉強食の世界では在り得ないことではない。だが、同属食いはそれすらも許されない所業。しかしそれを禁忌を無視して人間は人を食らう。
圧倒的な飢え。精神の病。自らの行動思念によって。
柳沼の場合、人食いとは相手を自らに取り込み糧とする一種の儀式であった。ある意味性行為が不可能になった代償行為。
柳沼の繊細な指先が裕子の死体の顔を撫でる。優しい手つき。生きた女性ではなく死んだ女性ゆえにやれる柳沼の愛撫。その指先が何度も口付けした唇を触り、血の気が引いた青白い頬を通り、温和だった瞳で止まる。鈍い音と共に指先が潜り、眼球を視神経ごと引きずり出し、そのまま柳沼は口の中へと放り込んだ。グチュリと潰された眼球から飛び出した硝子体が口の中に広がる。
「ゼリーみたいだな」
恋人の目玉を食らった感想はそれだけだった。

それから柳沼は恋人の死体を食らい終わった後、どこかが狂ったように牛肉などを食わなくなった。その代わり食べるようになった人肉。すなわち人の肉。
牛肉などもやはり子供の頃の方が柔らかく高嶺で売られるように人も出来るだけ若い方が美味しい。
しかし、そう簡単に子供が手にいられるわけも無い。ホームレス一人が疾走したのと子供がいなくなったのでは他への影響力が段違いだからだ。
「がりっ、ぐちゅっ、ぶちっ」
柳沼が冷蔵庫から取り出した腐りかけた腕にそのまま歯をつきたて毟るように齧り取る。まるで獣のような醜態だが不思議と彼には似合っていた。
女性の腕についた腕時計はそのままにしているのは見分けをつけるためだ。表面の皮を千切り、中の肉を咀嚼しながら溢れ出る血を啜り飲む。

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