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柳沼隼人の場合〜人食〜
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柳沼隼人の場合〜人食〜 1

何気なく男は冷凍庫を開けた。
「あれ?もう右足しか残ってないよ。」
男は深いため息をついてこう言った。
「また補充しないとなぁ今度は由美ちゃんにするか」
 男はごく普通の23才のサラリーマンだ。特に外見に異常は見られない男には二年前に彼女がいた。しかし今、彼女はこの世には居ない、なぜって?彼女は男の血となり肉となったんだ。意味が分かるかい?そう男は二年前から人食をしているんだ。なぜ男が人食を始めたのか語る必要があるね、男の名前は柳沼隼人(やぎぬまはやと)話は二年前のクリスマスから始まるんだ。
柳沼はクリスマスなのに自分の部屋で不機嫌に座っていた。
「裕子のやろう」
柳沼は自分の彼女を待っていた。柳沼の彼女は今日、「急な用事ができた」と言いさっさと電話を切ってしまった。柳沼は深いため息をついた。柳沼は手に持っていたプレゼントを乱暴に壁に叩きつけた。
「なんだよ!ちくしょう」
今日の予定を柳沼は一ヵ月前から計画していた。すべては無駄に終わってしまったのだ。柳沼は時計を見た、もう夜中の二時だった。

 柳沼が壁に叩きつけたプレゼントは指輪だった。柳沼にとって柏木裕子(かしわぎゆうこ)は初めての彼女で今日、プロポーズをしようと考えていた。この裕子の行動に柳沼は怒りを覚えていたが、この時にはまだ柳沼は殺人や人食の世界とは無関係だった。
柳沼は裕子を大切に思っていた。その為、今日のプロポーズの計画も綿密に立てたものだった。プロポーズすることも微妙に匂わせていた。失敗は許されないと思っていたので、少しでも裕子の反応が鈍かったり、嫌な顔をされたりした場合は直ぐにでも計画を取りやめるつもりだった。しかし、裕子の反応はまんざらでもない様子だった。そんな裕子の反応が、内気な柳沼の後押しをしたのだ。にも関わらず裕子は約束を破り、素っ気ない断りの電話を入れてきただけだった。勿論、殺してやりたいとは思ったが、しかし、本当に実行する勇気も度胸も柳沼には無かった。
 柳沼は裕子の携帯に電話をしたが何回かけても留守番電話だった。柳沼は職場では温和な性格なので職場の同僚が今の柳沼の顔を見たらさぞ驚くだろう。それほどまでに柳沼は恐ろしい形相になっていた。
「……本でも読むか…」
柳沼は少しでも冷静になろうと一冊の小説を本棚から取り出した。

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