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逆転!関が原
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逆転!関が原 16

忠朝は元々秀頼の婚約者となっていた千姫を嫁に貰う約束をしていた。しかし千姫を新当主である忠輝に奪われた為、徳川方に付いた兄・忠政と別れ真田を頼って来たのだ。
「では信繁殿、徳川忠輝の軍師となった者は誰なのだ?」
義兄の吉久に信繁は答えた。
「はい、大久保石見守長安で御座います」

「大久保…?聞いた事が無いな。その者は何者なのだ?」
と考える福島正則に信繁は応答する。
「元の名を大蔵十兵衛という者で、武田家において我が父・安房守昌幸と共にかの法性院信玄公に仕え、薫陶を受けていたそうです。特に鉱山開発や領地の扱いに長けていたらしく、徳川家の関東入の後は関東総代官と金山奉行を兼ねていたと言います。」
「信繁、その大久保長安はどんな人となりなのだ?」
秀頼の問いに信繁は答えた。
「はっ、大久保長安はその能力は石田殿と我が父を併せた様な人物と考えます。但しその考え方はむしろ家康に近いのではないかと…」
「つまりは目的達成の為には手段を選ばぬ、という事か」
「御意にございます」

確かにこの戦術を考え出して忠輝や利勝の軍師となったのは武田家旧臣の大久保長安である。
元々忠輝の付家老を兼ねていた長安は旧徳川領だった関東や東海・甲信地方だけで無く、陸奥・出羽を始め日本各地の鉱山を調査、その時に築き上げた鉱山夫等の情報網を駆使して浪人や軍資金を集めたのだ。

そして、金の精製法を学ぶ為に南蛮人に接近した際にキリスト教を知った長安は、後にフランシスコ会の司祭ルイス・ソテロを秀康存命時に既に忠輝に引き合わせている。
忠輝はソテロを保護、キリスト教を支援する代わりにイスパニア(スペイン)からの軍事援助を望んだのだ。
そして当主に就くよりも前に腹心の花井主水正とソテロをイスパニアに派遣、帰途のメキシコで金と引換えに入手した火器・カルバリン砲等の大砲・弾薬を陸奥に持ち帰った。
これらの火器・弾薬は浪人達に配られ、徳川勢の数的不利を補うのに役立っている。
しかもソテロの前任地であるフィリピンのマニラから南蛮の密輸船が陸奥の塩竈に入っている…

この本多忠朝が小松殿を通して信繁に伝えた情報を聞いて、大坂城千畳敷は水を打った様に静まり返った。
徳川の叛意が伝わった時からずっと存在した、楽観ムードが完全に掻き消えたのだ。

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