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逆転!関が原
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逆転!関が原 13

「毛利殿、関ヶ原の直後の仕置の折にこの千畳敷において貴殿は申されたな。『秀頼様が軍の先頭に御立ちあれ、その時は我々が支えていく』と。この戦、どの様な策を用いるにせよ、今こそが関白秀頼様が千成瓢箪の馬印を翳して出陣される時で御座ろう。もしもそうであれば我が伊達家も全霊を上げて出陣致そう。我等一同も殿下を支えてこその出兵だと思うが如何かな?」
話を聞く内に正則も再び座った。政宗はその場の全員に聞かせながら輝元に語った。
この言葉を聞いた秀頼は白い顔をなお白くして
「うむ……心違いをしておった……。」
と搾り出すように言った。
「秀頼様が先頭に立つならば我らが全力を持って戦います。」
「戦術はこの三成が。」
「この市松(福島正則の幼名)、誰よりも働いてごらんに入れます。」
これに続いて輝元、信繁らも手を挙げた。しかしここで淀殿が口を挟んだ。
「若様をこの城から出して留守はどうするおつもりか?」
「る、留守居役は大野修理殿にお願い致すつもりです。勿論我々一同が秀頼様を御守りいたして…」
狼狽しながらも宇喜多秀家が淀君に反論しようとしたが、淀君は矢継ぎ早にまくし立てた。
「黙りや、秀家殿!秀頼君は太閤殿下の唯一の血筋を継がれる尊き御方ですよ!軍場如き場所に行かれて良い方では有りませぬ!」
千畳敷に集まっていた大名や豊臣家臣達は互いに顔を見合わせた。この淀君の過保護ぶりこそが秀頼が多少心身を鍛えていても大坂から精々京・奈良位までしか動かない理由であった。

しかし母を気遣おうとする秀頼に向かって、岳父の伊達政宗が訴えた。
「関白殿下が御母堂様を大事に思い孝を尽くす事、誠に良き事と存じ上げる。しかしながら関白殿下は家臣や領民を導くべき御方ですぞ!天下万民の安寧と御母堂一人、どちらが大事と思っているのですか!」
その言葉を聞いた秀頼はハッとして淀君と下座の家臣達を見比べた。そして淀君の方に身体ごと向き直して決意を述べた。
「母上、予は…秀頼は武家と公家の全てを治める棟梁でございます。天下の安寧の為にこの者達と共に出陣致しまする」

それを聞いた各武将ははっとして顔を上げた。珍しく秀頼が淀殿に真っ向から反論したのだ。
「御方様!!」
花のように崩れた淀殿を侍女が気遣うが秀頼は続けた。
「我は豊臣の跡継ぎであると同時に万民の長でもある。今度ばかりは母上のお言葉に従いかねまする。」
「若様!!」
「秀頼様!!」
千畳敷に集まった武将達から歓喜の声が上がった。
「今度こそ我の初陣である。皆の者頼むぞ。」
秀頼は自信に満ちた声で言った。
秀頼がまた一歩成長したと大野治長は感心した。そして今度こそ豊臣家は安泰であると胸を撫でおろした。

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