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密室にて
その他リレー小説 - サイコ

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密室にて 8

散らばった血や肉片を踏みながら車椅子を進めていく女。その顔は柔らかな笑顔だが目が凍りついている。廊下に出た途端に鼻につく異臭。転がる肉の塊、天井を見つめ続ける首、溢れかえる血液、白い壁は赤く染まっている。「・・・・う゛っ」気持悪い。俺は堪えきれず床に戻してしまった。女は俺の背中をさすっている。「・・・大丈夫、ですか?すぐに、良い所へ連れて行きます・・・」血や肉を無視して車椅子を進めていき、エレベーターの前に着いた。こんな状態で動いているのだろうか。・・・チーン 場違いな音をたてて、扉が開いた。
鈍い音がして、腐った肉の塊が転がり落ちてきた。中にはバラバラの肉が積み上げられていたのだ。俺の足元に転がってきたそれをよく見ると、膨張しきった人の顔だった。白目が青紫に変色し、黒目はどろりと流れ出している。肉の山から突き出ている巨大なアバラ骨に見えるものはチェーンソーだった。女はエレベーターに足を踏み入れ、次々と肉を掻きだした。
「誰、でしょうか。こんな、物、積んだのは。」女がチェーンソーを引き抜くと腐肉の山が一気に崩れ落ちた。・・・・しばらくするとエレベーターの中は、だいぶ良くなった。壁にへばり着いた、肉片や床の血液を気にしなければ十分使える。女が俺の車椅子に手をかける。「さあ、行きましょう。」エレベーターに乗り込みボタンを押す。―どうやら、最上階に向かうらしい。
エレベーターが静かに上昇しはじめる。
俺の横に立っている女の爪には肉のかけらが詰まっていて、そこから感染症にでもかかるんじゃないかと思う。服も汚れていないところを探すほうが難しい。そんな風に冷静に対峙出来ているのは、さっき女が俺の治療をした時に精神安定剤でも打ったのかもしれない。
「お前は何でこんなことをした。エレベーターの死体も全部お前がやったのか」
俺は途中まで自分がサイコ映画に出てくる哀れな登場人物かと思っていた。だがこれじゃスプラッター映画じゃないか。
「違う・・・」
女はうつろな目で呟く。
違うと言うことは、いまこの病院に人の躯をバラして喜ぶヤツが他にいるって事か。今までの出来事を考えるとこいつが1番当てはまる。「私は、チェーンソーなんて、使えないし、患者さんを、傷つけたり、しません。」女の虚ろな瞳が俺の目をとらえる。「絶対、に。」チーン エレベーターの扉が開いた。最上階には血や肉片はひとつもない。白くて清潔感のある廊下が続くばかりだ。人の気配は全くしない。先ほどまでの惨状が嘘のようだ。車椅子の俺と女が廊下を進んで行く。

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