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密室にて
その他リレー小説 - サイコ

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密室にて 1

夜中のマンションは、いつも薄暗い。常に電灯が照らしているはずのエレベーターの中でさえ、薄気味悪く感じられるほどだ。
「ふあーあ」
一つ大きくあくびをして、俺はエレベーターに乗り込んだ。
するとそのとき、
「待ってくださいっ!」
そう声がした。
見ると、若い女の人が走ってくる。OL風の髪の長い女性だ。
俺は慌てて開ボタンを押した。
「す、すみません。ありがとーございます」
息を切らし気味にお礼を言いながら、その女性はエレベーターに乗った。

「あ、何階っすか?」
俺は意味なく緊張しながら、素っ気なく聞いた。
「あ、12階で」
同じ階だ。
扉が閉まり、12のボタンを押す。
そして上昇が始まりかけたが――
ゴウンと音がして、急停車した。
「え?」
二人の声が揃った。
エレベーターは動かなくなり、おまけに電気まで消えた。
「ウソやだっ!故障!?」
「あー…みたいっすね」
どうせすぐ動く。そんなこと分かっているから特に俺は慌てなかった。
しかし、女性は慌てているようだ。仕方もないか。いきなり赤の他人と一緒に箱の中に閉じ込められたんだから。「・・・あのう・・」女性が話かけてきた。「なんすか?」「キチンと動きますよね?」「あ。きちんと動くと思いますよ。」エレベーターは。俺は初対面だから緊張しながらも答える。「そう・・・」女性はうつ向き、上着のポケットに手を入れる。閉所恐怖症・・・だろうか?何か呟いている。


取りあえず俺は非常用の連絡ボタンを押す。『―はい。こちらエレベーター管理組合です。』「あの―エレベーターが急に止まって電気も消えたんですけど。」『解りました。直ぐに修理の方を向かわせます。場所を教えてください。』「はい。場所は―」

ドオォォォン!

いきなり女性がエレベーターの壁を殴った。『・・・・。どうしました?もしもし?はあ・・・。また悪戯ですか?!いい加減にしてください!』ブツッと音をたてて連絡が途切れた。俺は助けを呼ぶどころじゃない。

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