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遠い夏の日の思い出
恋愛リレー小説 - 大人

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遠い夏の日の思い出 9


それでもやっぱり涼ちゃんは何も聞いて来ない。
ただ泣いている私の頭を優しく撫でてくれていた。
「涼ちゃん、私ねっ…」
「いいから…何も言わなくていいっ!」
と涼ちゃんに遮られて彩は言いかけた言葉を飲み込んだ。
いつも…いつも…どーして涼ちゃんはそんなに優しいの?私は…どーしたらいいの?
彩はただ泣くことしかできなかった。



ひとしきり泣いて涼ちゃんに送ってもらい少し落ちついた。
彩の家の近くまで来た時…誰かに声をかけられる。
「あれっ…涼汰じゃない?」
振り向くとそこには綺麗な女の人が立っていた。
「おっ、なんだ沙羅か…」と涼ちゃんと親しげに話しているこの綺麗な人は誰なんだろう?
すると、彼女は私の存在に気付き微笑みかけてきた。
『なっ、何だろう…この知的な雰囲気は…』

「こいつは、沙羅…高校ん時の同級生なんだ」
そんな涼ちゃんの言葉で私は彼女に礼をする。
「はっ、初めまして彩です」
すると彼女もニコッと微笑みかけてきた。

暫く涼ちゃんと沙羅さんは会話をすると別れた。
「またね、涼汰…」
「おぅっ」

『なーんか、嫌な感じがする…別れ際の彼女の顔…冷たい目で私を…』

気のせい…だよね…?

そんな事を思いながら私と涼ちゃんも別れた。


それから毎日のように私は秘密の場所に通った。
涼ちゃんに会いたいから…そして何よりあの場所が大好きだったから…。
でもあの日以来、私の中で沙羅さんの存在が引っ掛かって仕方なかった。

私と涼ちゃんは中学までは一緒だったのだが、高校は本土の別々の学校になってしまい涼ちゃんと会う機会も減って人づてに涼ちゃんの事が耳に入ってくるぐらいだったのだ。

そう言えば…涼ちゃんが高校二年の頃、彼女ができたって噂で聞いた事があったっけ……。
たしか…その人は知的な感じの綺麗な人だって…
名前は…えっとー…
……沙羅?…清野沙羅。
「えっ…!?あの沙羅さんだったんだ……なるほど親しいはずだわ…」
私はやっと全てが理解できた。ただ、最後の冷たい顔の理由はわからないままであったが…。


けど、別れてからもあんなに仲が良いのにあの二人は何故別れたんだろう…。
気になって仕方がない。
私の頭の中は、あの二人のことでいっぱいだった。



そんな彩は、悩みながら歩いている内に気が付いたら涼ちゃんの家の前まで来ていた。
涼ちゃんに会いたくて…。
すると、涼ちゃんの家のお店の裏手から涼ちゃんと彼女が出てきた。
私はとっさに電柱の陰に隠れてしまう。
「ねぇ、涼汰。私あれからずっと貴方のことが忘れられないくて…ずっと考えていたんだけど…私たちやり直せないかな…」
沙羅さんは泣きながら涼ちゃんを見つめている。
「ごめん…俺は…」
と涼ちゃんが言いかけた瞬間…沙羅さんが涼ちゃんにキスをした。

「!!」

―ジャリッ

頭が真っ白になった私は思わず物音を響かせ後退りすると、物音で私の存在に気付いた二人がこちらを見つめる。

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