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遠い夏の日の思い出
恋愛リレー小説 - 大人

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遠い夏の日の思い出 6


「今日は何しよっかなぁ〜」
服を着替えて、お母さんが作ってくれた朝食を食べ終え一人縁側で考えていた。
―リンリーン

風に揺られ風鈴が優しく鳴り響いている…
綾の両親はそんな娘を優しく見守っていた。
突然、東京から帰ってきた綾に何かあった事ぐらい親にしてみれば、全てお見通しで薄々感じていたからだった。
綾もそんな両親の優しさに心の中で感謝しつつ、申し訳なさで一杯だった。

「綾、ちょっと買い物してきてくれない?」
「はーい」
と母親に頼まれてサンダルを履いて私は家を出た。

―ペタッペタッ

地面を踏む度にサンダルが鳴る…その音を楽しみつつスーパーまで歩く。
この島には、大きなスーパーは一つしかない。
だが…そこは涼ちゃんの実家でもあり、ということは確実に涼ちゃんもそこに居る訳で……
涼ちゃんは、郡司家の長男で一人息子だからいずれはこの店を継がなくてはならない…。
なんだか昨日のこともあって顔を合わせずらい…。
私はお店の入口にクルリと背中を向け、向かいの防波堤に攀じ登り腰を降ろして海を眺めていた。
たまに足をバタバタさせてみたり、サンダルを落としそうになって慌ててみたり…一人でそんなことをしながら時間を潰していた。
どんなに時間を潰してみても目の前の現実は変わらないのに…すると

―プップー

と私の斜め後ろから車のクラクションが鳴った。
私が振り返ると、そこには軽トラに乗って運転席からこちらに手を振る涼ちゃんの姿があった。
「彩、何さっきから一人芝居してるんだ?」
「なっ…一人芝居て何よぉ」
私が頬を膨らませて怒っていると、それを見た涼ちゃんはプッと吹き出す…
「あっ、もしかして…涼ちゃんずっと見てた?」
「まぁーなっ」
「ひどぉーい!悪趣味…」と私は更に頬を膨らませていた。
「彩って本当、見てて飽きないよな」
そんな悪戯っぽく笑う涼ちゃんの言葉に先程の自分のマヌケな行動を思い出すと、急に恥ずかしくなって膨らませていた頬に熱がこもるのを感じた。
すると私は咄嗟に俯き
「じゃーねっ!」
と涼ちゃんを置きざりにして慌ててお店の中に入った。
とにかくお母さんに頼まれた物をさっさと買うと逃げる様にお店を出る。そこには涼ちゃんの姿はなく、ホッと肩を撫で下ろして歩きだした。
すると背後から声がする。「お〜い、彩〜!」

こっ…この声は…涼ちゃんだっ…!!

私は聞こえないフリをして早歩きをする。

―タッタッタッ

後ろから追い掛けてくる足音も早くなる。私は走りだした。
すると涼ちゃんも走る…。堪えられなくなった私はクルッと振り向いて
「もぅ、何なのよっ!」
と言い放つと、そこには仔犬の様にキョトンと私を見つめる涼ちゃんがいた。
「だって…彩、逃げるから…」
私は呆れた目で涼ちゃんを見る。
「で…なぁーに?」
「何って…?」
「何か様があるから呼んだんでしょ?」

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