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遠い夏の日の思い出
恋愛リレー小説 - 大人

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遠い夏の日の思い出 11

「ううん、私こそごめんね…何も知らないくせに…」
私はてっきり涼ちゃんと沙羅さんが寄りを戻したのかと思っていたけど…違っていた。しかも、別れたのは沙羅さんが振ったからだったなんて…。

私は高校生の涼ちゃんの事本当に何も知らないんだと思い知らされてしまった。涼ちゃんのことはなんでも知ってるんだっていい気になってた自分が恥ずかしい…。
そんな私を心配そうに覗きこむ涼ちゃん。

『お願いだから見ないで…こんな私を見ないでよっ!』

私は頬を流れる熱い物を感じ、慌てて涼ちゃんに背を向けた。
「彩…?」
「私…帰るね…」
それだけ告げると彩は走り去った。
そんな彩の背を涼ちゃんはその場に立ち尽くして見つめいた。


まさか、涼ちゃんが私を捜してくれてたなんて…

彩は少し嬉しい気もしたが、それ所じゃなかった。


それから暫くして島の豊漁祭が訪れる…―。
島にとっては年に一度の大きなお祭りで島全体も賑わっていた。
そんな中、彩は一人浮かない顔をしていた。
あの日以来涼ちゃんとは会っていない。もちろん、電話やメールのやり取りもなし。
もう、どーすればいいのかわからなくなっていた…。
そんな彩は縁側で足を放り出してボーッと団扇を扇いでいる…。
「彩、お祭り行かないの?」
そんなお母さんの問い掛けにも上の空。
「ちょっと彩…この間から変よ?」
「んー…」
そんな彩に溜め息をつきながらお母さんは続けた。
「どっちでもいいからほら、これ着て」
お母さんは彩に浴衣を見せた。
藍色地に紫陽花の花が所々に描かれている少し大人っぽい浴衣だ。
帯は薄い紫色。
それをお母さんは手際よく着付けて行く…。
「はい、できた!」
簪で髪を結うと、お母さんも頷く程の浴衣美人の出来上がりだ…。
「じゃあ、行くわよぉ!」「って……えっ?!」
お母さんも既に浴衣を来ている。頭の中がクエスチョンだらけになる彩は、この後もっとクエスチョンで埋め尽くされることになる。何故なら…お父さんまでもがちゃっかり仁平を着て彩の前に現れたからだ。
「えっ!お父さんも?」
と驚く彩は二人に両脇を抱えられ無理矢理連れられることになった。


会場は凄い賑わいで島にこんなに人がいたことにまた驚かされる。
何が楽しくて両親と祭りに来なければならないのか…最初はつまらなかった彩も今はまるで子供のよいにはしゃいでいた…。
そんな彩の姿を見て両親は顔を見合わせホッとした。最近の彩の様子を二人はとても心配していた。
もう、彩は大人だから原因を追求することはしないが両親からすれば大人になっても娘は子供。心配でならない。
とりあえず笑顔が戻った彩に一安心だった。
すると彩の目の前の視界に人込みの中から、浴衣姿の沙羅が飛びこんできた。
彩は慌てて両親の後ろに隠れる。
幸いこちらに気付いていない。彩はお店を見る振りをして沙羅が通り過ぎるのを待つ……。

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