素直になれたら… 6
なっ、何なの?コイツ……
先程からチクチクとあたしに刺々しいこの態度。
こっちは折角、謝ろうとタイミングを見計らっていたというのに……。
あぁ……ダメダメ。
やっぱり悪いのはあたしなんだし、ここは冷静に抑えなきゃ。
「それは、それは。先程は失礼致しました…でしたら、もうあたしに関わらないで下さい!」
あぁ……またやっちゃった。
どうしていつもこうなるんだろう……。
あたしはくるりと踵を返すと小走りでその場から走り去った。
「真崎さん……」
あたしは背中で塚原くんの呼び止める声を聞きながら、チクッと胸の奥が痛むのを感じる。
何?この痛み……
この時のあたしには、まだこの痛みが何なのかわからなかった。
とにかく一分でも、一秒でもあの場所に居たくなくて。
気が付くと走っていた。
あたし、どうしちゃったんだろう……
さっきから胸のドキドキが止まらない。
ずっと走り続けたせい?
それとも……
「ごめーん、待った?サークルの勧誘に捕まっちゃってさぁ」
暫くすると、奈菜美が顔の前で手を合わせながらこちらに駆け寄ってきた。
「……もぉ、遅いよぉ」
あたしは必死に胸のドキドキを抑えながら笑顔を向ける。
すると、直ぐに奈菜美は心配そうにあたしの顔を覗き込んできた。
「ちょっと栞、何かあったでしょ?」
「えっ?」
「隠しても駄目よ、何年親友やってると思ってるの?」
すっ、鋭い。
流石、奈菜美だ。
あたしのことは何でもお見通しなんだから。
「う、うん。それがね……」
観念した私は奈菜美と別れてからの出来事をありのまま、包み隠さずに話すことにした。
あたしが話している間中、奈菜美はずっと笑いを堪えている様子だった。
そしてあたしが話し終えると、何かから解放されたかの様にふぅーっと、一つ溜め息を吐き出し口を開いた。
「要するに、栞はその荻野っていう彼のことが好きなのね?」
あたしは一瞬、奈菜美の言葉を疑った。
「はっ?どうしてそうなるのよ!」
「だって、朝の出来事からずっと彼のことばかり考えているんでしょ?」
「そっ、それはいきなり叩いてしまったことの罪悪感というか……とにかく、謝らなきゃってそればかりで……」