素直になれたら… 7
あたしは予想外の奈菜美の言葉に何故か一人焦る。
「まぁ、理由はどうあれ今日一日、ずっと彼のことを考えていたのは確かなんだから間違いないわよ」
奈菜美は何故か力説し、大きく頷きながら一人で納得していた。
「ちょ、ちょっと。勝手に決めないでくれる?」
「えっ、何?違った?」
「違うわよ、あんな奴問題外もいいとこよ!」
そう言い放つあたしの迫力に奈菜美は大きな目をパチクリさせている。
そして一呼吸置いて、今度はお腹を抱えて笑いだした。
「何もそんなにムキになることないのに」
「だって……。奈菜美、面白がってるでしょ?」
ぷぅと、頬を膨らませるあたしを見て奈菜美は必死に笑いを堪えている。
「ごめん、ごめん。でも、とにかく彼にはちゃんと謝らないと、今後の栞のイメージに響いてくるんじゃない?」
奈菜美の言葉にあたしは、ハッとした。
確かに今のままじゃ第一印象最悪だし、もし荻野に変な噂でも流されたりしたらそれこそ、あたしのキャンパスライフが台無しになってしまう。
それだけは絶対に避けたい。
「そうよ、あたしは夢にまで見たこのキャンパスライフを女の子らしく過ごそうって心に誓っていたの。それをアイツに壊されるのだけは絶対に嫌っ!」
この時点で既に手遅れの様な気もするが……
「そうそう、男勝りな栞が女の子としてやり直せるとしたら、このキャンパスライフが最後のチャンスになるんじゃない?」
て、奈菜美……。
いくら親友でもそれは言い過ぎなんじゃない?
時々、奈菜美の口から吐き出される毒舌っぷりにあたしでも驚くことがある。
「ちょっと、最後って……。とにかく面倒なことになる前に早く謝らなきゃだよね」
「そうそう、だからランチの時も言ったでしょ?」
「う、うん……」
どうしてたった一言、素直に謝れないんだろう……
あたしはそんな自分が情けなくなり、奈菜美に返す言葉も無かった。
『とにかく明日は謝ろう』
そうあたしは心に決め、奈菜美とサークル見学を楽しむことにした。
「…でさ、奈菜美はどんなサークルがいいの?」
引っ切り無しに勧誘の声が飛び交う構内の中庭を歩きながら、あたしはそう言った。すると彼女は顎に人差し指を乗せて何やら思案顔。そして、
「まず、体育会系はパスね」
そう答えた。あたしがどうしてなのか質問すると指を二本立てて『理由は二つよ』と笑う。
「二つって?」
「簡単よ。一つは僅かな本番の為に貴重な日々を練習に費やすのが嫌なの」
「まぁ、菜奈美はあんまり運動好きじゃないしね。もう一つは?」
そこで奈菜美はにんまりと笑った。