素直になれたら… 4
テーブルの上にはオムライスが二つ。
ふわふわした卵の上にはデミグラスソースがかけられ、辺りのレストランも顔負けのここの学食のメニューは、メニューの豊富さもさることながら学生のお財布に優しい値段になっている。
もちろん、味も言うことなし。
早速、あたしと奈菜美は
「いっただきま〜す」
と、パクパクとオムライスを口に運びながら奈菜美と話しているうちに、先程の出来事もすっかりあたしの頭の片隅に追いやられていた。
「そういえば、栞はもうどこのサークルに入るか決めたの?」
「……サークル?まだだけど……」
突然の奈菜美の言葉にあたしは、危うくスプーンに乗ったオムライスを落としそうになる。
「学科が違うからせめてサークルくらいは一緒がいいじゃない?」
そう言って微笑む奈菜美。まるで私の寂しい心を読んでくれている様な優しい言葉。
あたしは改めて奈菜美の存在に感謝した。
「確かに……今の状況で奈菜美がそばに居ないのはかなりキツイもん」
「はい、じゃあ決まりね!?午後の講義が終わったら見学に行こ?」
何だか楽しそうな奈菜美。あたしもこれで少し気持ちが楽になった。
それもきっと奈菜美の気遣いに違いない。
それからあたしたちはどこに見学に行くか話しが盛り上がり、食後のコーヒーを楽しんでいた。
「さて…と、そろそろ行こっか。」
時計を見ながら立ち上がる奈菜美。
「え?あ…もうこんな時間?そろそろ戻らないと…。」
ホントはもう少し奈菜美とこうしていたいけど…それにちゃんと謝ることできるかな…。
「…大丈夫。ちゃんと謝れば、きっと分かってくれるよ。ほらっいつもの元気な栞はどこ行ったの?」
不安げなあたしの顔を見て奈菜美は気持ちを察したのか、元気を注ぎ込むように、ポン!とあたしの背中を叩く。
「栞は栞らしく…ね?」
そうよね。あたしらしく…ありがとう、奈菜美…。私、頑張るよ。
「じゃあまたね!」
「うん、後でね…」
奈菜美と廊下で別れ、あたしは講堂へ向かった…。
「…とは言うものの…」
あたしは今、扉の前に立っている。
どうしよう…何て言おう…。
そんな事ばかり考えて、中に入れずじっと突っ立ったままのあたし…。
「そこ…中入らないなら退いてくんない?」
聞き覚えのある声に振り返ると…
げっ……
「邪魔なんだけど。」
不機嫌そうに見下ろすのは、あの男…。チャンス!今よ、栞…早く謝っちゃいなさい。