素直になれたら… 3
「さすが栞!って感じね。入学早々、さっそくやらかしちゃったワケか……」
学食に向かう廊下で事件の顛末を聞き終えた奈菜美の最初の一言はそれ……
「無理だと思ってたのよ。大学に入ったら女らしくするって栞は言ってたけどさ、元々が元々だしね。」
奈菜美……親友とは言え、それはあんまりな言い方じゃない?そりゃ並大抵なコトじゃないってわかってたけど、一応努力はしてたんだよ?
そんな考えを表情から読み取ったみたいに奈菜美は不意に真顔になった。
「理由はどうあれ、奈菜美から手を出しちゃったんだし、ちゃんと謝らなきゃね。」
「うん、仕方ないけど謝るよ。はぁ、気が重いなぁ……」
「元気出しなさいって、今日はお昼オゴってあげるから。そんな顔、栞には似合わないわよ?」
奈菜美の気遣いが嬉しい。言いにくいコトでもはっきり言ってくれるのが友達なら、やっぱり奈菜美は大切な親友なんだって思った。
昼時の学食は新入生や、それをサークルに勧誘しようとする先輩達で、ごった返していたけど、の中で何とか場所を見つけてあたしと奈菜美は席に着いた。
「でもちゃんと言えるかなぁ…」
ため息をつきながら、あたしは斜め前にあるソースの瓶に手を伸ばした。
ギュッ…
ソースの入った瓶の冷たい感触の代わりに、温かくゴツゴツした感触があたしの手の平に伝わる。
「ん…?」
疑問に思いその手に目をやると、あたしの手が握っていたのはソースの瓶を掴む人の手…だった。
「ごっごめんなさいっ!」
「何だ、あんたか。」
聞き覚えのある声…。あたしが見上げた先にいたのは…
「あーっ!!あなたは…」
思わず大声をあげてしまい、慌てて自分の口を塞ぐ。
ここの学食は、和・洋・中とメニューが豊富で安いながらに味もかなり良い。
あたしは奈菜美におごってもらったオムライスを、奈菜美はスパゲッティのカルボナーラを食べながら、先程の彼の愚痴をダラダラと続けていた。
「……でさ」
「それでね……」
なんてパクパクと、オムライスを頬張りながら話しが止まらないあたしに奈菜美は呆れ顔。
「栞、その話しはもうわかったわよ。それより、サークル何に入るか決めた?」
何だか、上手く交わされた感がするのは否めない……
まぁ、いっか!?
そこはあたしも流すことにした。
「んー…まだ悩んでるんだよねぇ」
「どうせならサークルだけでも一緒にしたいよね」
確かに……。
ただでさえ知らない人ばかりのこの状況。
それに加えて先程の事件。
サークルだけでも奈菜美と同じにしておけば、楽しいかもしれない。
すると、奈菜美が提案する。
「ねぇ、午後の講義が終ったら色んなサークル見学してみない?」
「そうだね、じゃあ…終ったらまたここで待ち合わせしよっ」
そんな訳で、あたしたちは講義を終えてからサークル見学をすることにした。