PiPi's World 投稿小説

四葉のクローバー。
恋愛リレー小説 - 青春

の最初へ
 2
 4
の最後へ

四葉のクローバー。 4

 由香はふわりと甘い香りでも漂ってきそうな笑みを浮かべた。いや、作った。こんな笑顔をされたら、数時間前までの俺なら喜んでホイホイ言うことを聞いていただろうが、今は違う。
「やだね。喉が渇いたんなら、水でも飲みゃいいだろ」
 男がみんなオマエの(作り)笑顔に騙されると思うなよ。俺は由香に背を向け再び寝る体勢に入った。
「河口敬太くん」
 唐突にフルネームで呼ばれ、俺はどきっとした。
「私、あなたの秘密知ってるんだけど」
 意外な言葉に身を起こすと、不敵な笑みを浮かべた由香と目が合った。
今、自分はどんな表情をしているんだろう。
ぽかんと口が開いているのかもしれない。
 付いていけない。秘密を知っている?一体、彼女は俺の何を知っているのだろう。わからない。
 俺がそんな風に思い当たる節を巡らしていると、由香は、急に笑い出した。
「ふふっ、うそ。そんな秘密なんか知るわけないじゃない」
すぐに、はぁ?と言い返したかったが
「でも、あるのね。知られちゃ困る秘密が」
また、由香は不適な笑みを浮かべた。
 こいつカマかけやがったな。
そんな怒りを抑えつつ、急に俺は気分転換がしたくなり
黒革の財布をデニムのポケットに入れた。
デニムのポケットにすっぽりと収まってしまうこの財布は、もう二年近く使っている。
「あら、お茶買って来てくれるの?」
「知るか」
この女と喋ると異様に言葉遣いが悪くなる。
この女は異様に言葉遣いが丁寧。それが余計に自分の言葉遣いの悪さに腹が立つ。
 何がお茶だ。絶対、俺は買いに行かないからな。


「えっ?……買ってきてくれたの?」
一応、由香の部屋のドアにノックをした。
あいつみたいにドアを勝手に開けて、変態呼ばわりされるのはゴメンだ。
どうぞ、開いてます。
これは、このドアを叩いているのが俺と知っていたら、こんな対応はされないだろう。
「……なんだ。アナタなの」
思ったとおり、彼女の目が自分を捕らえると、すぐに顔つきは変わった。
そこで、俺が500MLの緑茶を無言で差し出した。
それを手渡して部屋に帰ろうとしていた俺だったが、意外にも彼女はこの新鮮な反応を返してきた。
 彼女の本性を知っている俺でもこんな反応が帰ってくるとは思ってもみなかった。
 でも、俺がこんな風の吹き回したかというと。
「出かける先に母親に頼まれたから、買ってきてやっただけだからな」
だった。
「わかってるわよ。それに、私は緑茶よりジャスミン茶が好きなんだから」

SNSでこの小説を紹介

青春の他のリレー小説

こちらから小説を探す