四葉のクローバー。 28
「………?」
何だろう。急に俺の名前呼んだりして。
「……人って話し合えば、わかりあえるもの?」
「えっ?」
真剣な顔で視線を交差させる由香。
しかし、何かに引き戻されるように、
すぐにその顔は崩れていく。
「……ううん、何でもない、忘れて」
スタスタ部屋を出ていった由香。
呼び止める間もなかった。
「人って話し合えば、わかりあえるもの、か……」
忘れて、と言われても忘れられないので、
心の中だけで、答えを出そうとしてみる。
でも、わからない。
わかりあえたことはある。
祐介とトラブルが起きて、絶交宣言した時だって、
何度も、話し合ってわかりあった。
お互いの気持ちを。
程度は、今思えば低いかもしれないけど。
「血は繋がってないけど」
「弟は弟よ?」
いったい由香は、何を抱えているんだろう。
それは、どれくらいの大きさのものなのか、
由香の生年月日さえ知らない俺には、
まだ当然わかるはずもない。
「…………あの」
「うわぁ、びっくりした」
「…………?」
気が付くとパジャマらしき着衣に上着を羽尾った美保が目の前にたっていた。
いつもと違って弱々しい印象、痩せたのかな……。
「久しぶり……」
俺の顔をみたら少しは動揺するかな?なんて思っていたら、逆に安心しきったように微笑んでいる。
「あ、そうだ。私お茶いれてくるわね」
気を利かしたのか、タイミングだけわざとらしい
が、言動は自然だ。
バタンとドアは閉まり、部屋は密室になった。
心臓が痛い。美保は、一直線に俺を見ている。
「あ、あのさ」
と、言ってみたものの、言葉が続かない。
頭の中でいろいろ整理してみるのだけど。
「……ていうか、大丈夫なの?」
えっ?自分の耳を疑った。
逆に言いたい言葉を言われた。
ていうか、口調はいつもよ同じじゃ……。
「ほら、倒れたんでしょー?由香ちゃんから聞いたよ」
「あ、うん」
すると、いきなりおでこに美保は手を添えた。
「熱? あ、ないね。顔色、んーよくないねー」
いつもと変わらない美保ペースにおされ気味。
ここままじゃ、聞きたいことが聞けない。
「あ、あのさ」
「何?私のこと、私なら平気!ちょっとヤケ食いで
2日で3キロ増えちゃっただけだから」