四葉のクローバー。 26
「……あっ」
すると、一人の女の子が急にどこからか現れた。あれは……
「………美保?」
その美保にしか見えない女の子は、その葉っぱだけしか見ていない。
俺が見えないのか?
女の子は、その葉っぱを無表情で摘みとろうとしている。
「あ、あの……」
「………!!」
手を慌てて引っ込ませ、過敏に反応した女の子。一直線にとろーんとした目でこっちを見ている。
どうやら、俺は見えているらしい。
「あのさ、その葉っぱ、何ていうんだっけ?」
「…………?」
「じゃあさ、ここは……どこ?」
「…………?」
……だめだ。話しかけても、反応がない。
操り人形のように不自然に首を傾げる。
何なんだいったい。
わけがわからず、呆然とほうけていると、また女の子はフイッと背を向け、また葉っぱを摘みとろうとしている。
無表情で。
摘みとったら、何かが終わる。
そんな気がして、とにかくとめないと。
それだけが頭にエンドレスに響き。
「美保!!」
そのまま名前を力一杯叫んでいた。
思い出した!!
そうだ。あの葉っぱは……。
何でこんな簡単なこと思い出せなかったんだ。
叫んだ瞬間、ピタッと女の子の動きが止まった。
葉っぱを摘みとる、まさに瞬間。そのまま女の子は動かない。
はぁ……何とかたす…かっ…
息切れがして、下を向きながら息を必死にする。
「ちょっと!」
「…………!」
喋った?息をきらしながら、顔をあげた。
しかし、女の子はそれ以上に驚きの一言を発した。
「気安く美保だなんて呼ばないでくれる」
振り替えって、目を細めて、俺を睨む女の子。腕まで組んでいる。
何て見覚えのありすぎる光景。