四葉のクローバー。 25
微妙な雰囲気だな。
相変わらず。
「……何て言うの美保さんに」
無言を問答無用に破ったのはあっちだ。
後50メートルも歩けば、美保の家につく。
周りはすでに住宅地で、空は太陽が沈みかけた夕方。夕陽がぼくらをさしている。
「何で聞くのさ?」
逆に聞いてみる。
「聞きたいから聞いた。……じゃ理由にならない?」
「…………」
また、さっきと同じように口元を震わせる由香。
俺は、少し調子にのることにした。
「言いたくないからいわないじゃ、答えにならない?」
怒るかなと思っていたら、由香はふふっと笑みを溢した。
「……いい答えじゃない」
「どうも」
その時、フラっと一瞬だけ視界が歪んで見えた。
「もうすぐ着くわね」
冷や汗だろうか?何かが顔から滴り落ちた。
どうしたんだ、俺?
一瞬たじろいたが、それでも、俺にはやらなきゃいけないことがある。由香に悟られないよう前に進む。
「さぁ、着いた」
「……そうだな」
目的地の美保の家の前で由香が俺の方を見た……その瞬間、由香は目を見開いた。
「ちょ、ちょっと大丈夫?」
バレたか?
「すごい汗じゃない!」
額に由香のひんやりした指が触れる。
「敬太くん?
由香の何度も問掛ける声がだんだん遠くの方から聞こえてくる。
「敬太くん!?」
その声を最後にガクッと意識はなくなり、覚えているのは、ここまでだ。
「………くん?」
夢を見ていた。何だかよく分からないモノクロな夢。
こんな時ぐらい、いい夢見させてくれよ!と思う。
「…………のせいで」
あっ。白と黒しかなかった夢の中、ここは川沿いの河原?
色がだんだんはっきりしてきて、眩しくて目を細めた。
「………ごめんね」
あれは……なんだっけか?あの小さな葉っぱ。
……どうして思い出せないだろう。