四葉のクローバー。 23
そして、俺の視線に気づくと、意味ありげに口元を震わせた。
「………?」
「さて、そろそろチャイムなるんじゃないかしら」
「……そうですね、早く行きましょう」
暗い顔から一気にパァッと明るくなった瑠璃さん。
ガラッと二人は連なって、企画室を出ていった。
ピシャと無機質に扉が閉まった。
「………えっ?」
思考回路?……頭が上手く働かない。
一人取り残された俺はハッと意識を取り戻したかのように我を思い出した。
企画室の地味な独特の匂いを再確認。
そして、不幸にも授業が始まるチャイムをこの場で聞くこととなった。
「あーあ。俺ってホントに、ついてないよなぁ〜」
「…………」
これは俺がぼやいた言葉じゃない。いやついてないことには代わりがないが。
「何だよ、祐介。ついてないのは俺の方だけど」
時間にはとことん厳しい先生ことで有名な河原先生に睨まれて終わった五時限目。
クラスメイトにはクスクス、笑われた。
「何で、お前の方がついてないんだよ」
祐介の前の席に勝手に座り、寝そべって腕の上から
出ている顔を観察する。
いつにも増してアホ面の祐介。
でも、いつも空回りしている無駄な明るさが
ひとつもないような気がする。
「はぁ〜」
出てくるのは、この重いため息だけ。
何があったんだ。珍しいよな……。
「もしかして、またフラれたか?」
に、してもいつもとは様子がちがく見えるが、
「………………?」
祐介の反応は微妙だが、キョトンとしているあたり
から、これは違うらしい。
過去も祐介が女にフラれたのは、幾度とあったが、
自慢のポジティブ精神で数秒で乗り切っていた。
じゃあ、どうしたんだっていうんだ。
はぁ、次から次へと事件って続くもんなんだな。