四葉のクローバー。 19
「今は、とくに風邪が流行ってるから、気をつけろ。先生は20年近くひいてないから、見習うように」
ザワザワ教室がざわめだす。
「先生じゃ、風邪も怖くて逃げるんじゃない!」
「風邪、ひきたくてもひけねぇんだけど」
「手洗い、うがいは大事だよね!先生」
このクラスは元気すぎて、風邪も来なさそうだな。
「そーいや、美保ちゃん風邪なのか?」
後ろで祐介が背中をつついてきた。
「何だ、知ってたんか」
あの遅刻スレスレの時間で美保が休みって、
いつ知ったんだ?
ま、でも。本当の理由は知らないらしい。
顔も言葉も冷静を装う。演技力はないかもしれないが。
しかし、祐介は、意外な答えを返してきた。
「知ってるも何も、由香ちゃんから聞いたし」
「はぁ?」
「ま、聞いたっていうか……
俺が由香ちゃんあれ、美保ちゃんは?
って聞いたら、風邪ですって。
という答えが返ってきた、だけだけど」
その答えが返ってきて、飛び跳ねそうになっていた
心臓が正常に戻った気がした。
由果が何か喋ったんじゃないか、ハラハラした。
まぁ、それだけなら、逆に怪しまれないかもしれない。
「ま、ただの流行りの風邪だから黙って安心しとけ」
「そうだな。お見舞いとか行かない方がいいよな」
お見舞いというキーワードに思わず過敏に反応し、立ち上がりそうになった。
「と…とんでもない!やめとけ、やめとけ」
声が上擦ったな。
ちょっと、しつこく言い過ぎたかもな。
「わ、わかったよ。行かないし、心配しないで、うちで黙って安心してるよ!……何か今日の敬太変だな〜」
小、中学生に間違えられる男らしさのない可愛らしい顔で迫力のない睨み。でも、今日の俺には凄みを感じる。
「悪いな、祐介」
ごまかしたことを心の中で謝る。
「敬太くん」
昼休み。弁当を食べ終わり、祐介を含めた男子女子数人と喋っているとクラスメイトの女子に呼ばれた。
「ん?何」
「ほら、美保ちゃんといつも一緒にいる子」
おもむろに廊下の方を女子は指差す。