四葉のクローバー。 18
祐介は満足げにニコニコ笑い、
「じゃあ、俺先に行くから」
おい、待て。呼び止める間もなかった。
一人取り残された俺の額からは冷や汗がダラダラ垂れている。
「あの……これは、その」
「何?」
「ゴメンな……さい」
恐怖を感じ、頭を下げ謝った俺に由香は涼やかな声で、
「……別に、気にしてないけど?」
えっ?顔を上げた。
由香は首を傾げて、キョトンとしているし、表情も柔らかい。
予想外ってこのことをいうのだろうか、
「それより、早くしないと遅刻じゃない?」
細くて白い指が指す、時計はチャイムがなる一分前、やっと現実に戻ってきた感じがした。
「あー良かった。間に合った」
息を荒くして、席に座った直後、教室のドアがガラッと開き、雰囲気は一瞬にして変わった。
「ほい、ほい。座れ座れ。先生のおでましだぞ」
最早、慣れすぎて、つっこみどころのない担任の秋山先生の第一声。
これで顔が由香と劣るとも劣らない美人に、面倒見の良い先生だから、苦情は今のところ一つもない。
最も授業参観では、話方はまるで話かたが別人になるので、保護者の大半は、まず知らないだろう。
「おっ、今日は全員いるな!全員出席と……」
先生は、いつもよりえらく適当な出席をとると、出席簿に記入した。
そして下を向いて長く垂れ下がった髪をかきあげた。