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四葉のクローバー。
恋愛リレー小説 - 青春

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四葉のクローバー。 13

おそらく初対面。美紀さんは由香の方を見てにこやかに微笑んだ。
「……よね?まどかさんから噂はかねがね聞いてはいたのだけど。挨拶にいけなくてゴメンなさいね」
 まどかさん、俺も油断したら忘れそうなあの母の名前だ。
「いえ、私こそ挨拶が遅れまして……桧山由香と申します。美保さんとは同じクラスになりまして、色々とお世話になってます」
相変わらず、礼儀正しい。同じ歳でここまで礼儀正しいと何故か逆に怪しく思ってしまう。いったいどこで覚えたのだろうとか。
 予想内というべきか、由香は美紀さんに気に入られたようだ。
「あら、同じクラス。こんな素敵なお嬢さんが?心強いわぁ」
「あ……いえ、それは私の方だと思います」
あら、そうなの?と美紀さんがようやく声を出して笑い、俺もつられて笑い、由香もにこやかに笑い、雰囲気はなごやかになった。
 だが、話を本題に引きずり戻さなくては。それをしに俺達は此処にきたわけだし。
あまり触れていい話題かどうかは迷うが、口を開かないと。
「あの美紀さん……美保のことなんですが」「………っ!」
 当然、重苦しい雰囲気がやってきた。
美紀さんの表情は微妙で読み取れない。絶望にもよく似た悲しい表情。何かに取り残されたように、顔の筋肉をこわらばせて、まばたきさえもしない。
「美紀さん……?」
おそるおそる問掛けると美紀さんは思い出したようにまばたきをし始めた。
「あ、あら……ゴ、ゴメンなさい。ちょ、ちょっとボーッとしちゃったみたいね」
言動がおかしい。
美紀さんは観念した合図なのか溜め息をついた。重い心からはきだすような溜め息。
「こんなこと初めてだから、どうすればいいのか、わからないのよ」
年齢の割にグッと若く見える目元からは涙が溢れてきて、それをひっそりポケットから出したハンカチで拭う。
色っぽいな。
って、こんな時にまでそんな言葉が出てくる俺っていったい。
「あの」
突然、由香が声を張り上げた。
「帰りにまた来てもいいですか?」
涙を拭いながら、美紀さんは口元を優しく微笑ませ。
「えぇ。もちろん。逆にお願いしたいぐらい……」

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