四葉のクローバー。 31
「…………」
「あ、あのさ」
何とかしなきゃと思って、美保に話しかけた瞬間。ドアを遠慮がちに叩く音がした。
「お茶いれてきましたわよ。……入っていいかしら?」
由香の声だ。由香が部屋を出てから三十分、気を使って下で待っていてくれたんだろな。
無数のカップが揺れる音。おぼんを持っているみたいだ。
「はーい、どーぞっ、お入りください」
美保がニコニコ笑っている。
いつだって肝心な時だけ、卑怯な俺は内心助かったと思っていた。
「姫、その服可愛い!どこで買ったの?」
「これは、新宿のセレクトショップだったかしら」
「へぇ、さすが姫だ!!」
紅茶を飲みながら二人の話を黙って聞いている状態が続いている。
由香は相変わらず、この大人びたしゃべり方。美保は美保で由香を姫と呼んでいる。
はぁ、思わずため息をついた。
まだ問題は解決してないような気がするんだけど。
「何?ため息なんかついて」
由香が少し笑みを含ませた声をだす。
「いや、別に」
あ、そう。と由香はまた美保と喋っていたが、話がちょうど区切れた瞬間、
「そういえば、敬太くんと美保さんのお母様って仲いいのね」
グルリと顔だけこっちを向いて言った。
ずいぶん、話題の切り出しが唐突だな。
「うん、仲良いよね。先週の日曜日なんか、うちで借りてきたドラマのDVD二人で見てたし」
日曜日か、それで珍しくあの日出かけたのか……。
でも、何で由香はそんなこと聞いたんだろう。
「そろそろ七時になるわよ」
ノックの音と共に美保のお母さんが顔をだした。
「はーい」
美保と由香がお盆にカップを片づけはじめた。
「大丈夫?まどかさん心配してるんじゃない」