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私の秘密
官能リレー小説 - 若奥さん

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私の秘密 88


この先に、ただ「団地」と呼ばれるアパートがある。アパートといっても3階建ての、コーポに近いようなその建物は、もう何年も誰も住んでいない。昭和の造りを思わせるコンクリートの壁にはひびが入り、ベランダの扉はところどころ割れている。かつての住人がここで首を吊り、その後何度住居者が代わっても、1ヶ月もせずに出ていくとか、管理人一家が強盗に殺害され、毎晩のように悲鳴が聞こえるとか、後付けの怪談話に事欠かない場所だ。
団地のベランダ側には公園があり、かつてこの団地に住む子供達が遊んでいたであろう遊具が錆びれ、ベンチの板はささくれ、存在を忘れられたかのように佇む木は手入れすらされず、その不気味さに拍車をかけている。
最近ではこの団地のベランダに、いるはずのない人影が数体、公園を見下ろすようにボンヤリと揺らいでいるという目撃例があったらしい。
こんな身の毛もよだつ話を聞けば、私は何が何でもこの男性達から逃げ出していたであろう。
だけど私は、この怪談話の真実を知っている。動画配信でも何度も見ている。この公園は、慎一さんの組織のメンバーが女性を露出、痴漢、調教するのに利用する場所であり、サイト会員の覗きの場として団地が使われているのだ。実際に愛さんや未来ちゃんもここで犯されている。暗視カメラを持って撮影に臨むマニアもいれば、ベランダにシートを敷いて視姦しながら自慰行為に励む強者もいる。きっと怪談話のネタになったのは後者だろう。見えるはずのない人影がオナニーしてたなんて話じゃなくて良かった。

『ん……ん…………はぁ……ぁ…………』
公園の方から微かに聞こえる悩ましげな声。
「先客がいますね、誰だろう?」
男性の方は後ろ姿でも分かった、慎一さんだ。こちらに背を向け、ベンチに座って小柄な女性を犯している。団地の方へ結合部を見せつけている。
『直美さん…』
「あ、ホントだ。直美さんですね。夫婦水入らずのところを邪魔するのもあれですから、団地に入っちゃいましょう」
その方が誰かに見られなくて済むはずなのに、安堵とは遠く、残念な気持ちのほうが強かった。
「ひとり、会員でもない者が最近潜り込んでるらしいんです。しかも未成年らしくて。あの2階の右端のベランダだけ妙に明るいでしょ?」
『あぁ、確かに』
「どうもあそこをよく使ってるらしいんです」
『そう…なんですか。え?あ、もしかしてその子のところに?』
「勿論。関係者でもない奴に勝手に侵入されると迷惑ですから」
激しいトラブルにならなければいいけど…。
「団地」の入口を入ると、中は真っ暗だ。男性が携帯のライトで足元を照らし、階段を上がっていく。部屋の扉は空いたままだったり閉じていたりだが、人の気配は多い。時々堪えているような喘ぎ声も漏れてくる。
「カップルで来る人もいますから。あ、ここだ」
閉めきったドアをコンコンとノックすると、中からゴソゴソと慌てているような音が聞こえた。相手が出てこないと、男性はドアノブに手をかけた。鍵は開いている。
部屋の中を男性がライトで照らすと、小柄な少年がこちらを向いて立っていた。身長は私とそんなに変わらない、160pくらいだろうか。秀君が以前通っていた中学の制服を着ている。
まだ大人になりきれていない、可愛らしい顔だ。少年は可哀想なほどに怯えていた。
『あ……あの…ごめんなさい………』
「謝るってことは悪いことだって分かってるんだね?ここは許可を得た大人だけが入れる場所なんだ。どうやってここを知ったかは知らないけど困るんだよな」
『は、はい……すみませんでした…』
男性の口調から、少年を怖がらせようとしているけど、実際に何か懲らしめてやろうという気持ちがないことは分かった。しかし少年にそれを察する余裕など、当然ない。もう勘弁してあげたら…そう言いかけたが、私が間に入っても何もできそうにない。
「二度とここに来ないって誓えるなら学校にもご両親にも言わないであげるよ」
『は、はい!もう来ません。本当にすみませんでした』
深々と頭を下げる少年。

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