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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 99

それに対し、新入りメイドたちのとった行動は。

グイッ。

「へ?」

ザシュッ!

朱鷺を盾にして斬撃をやり過ごすことだった。
あまりにも非人道的な行動。だがここで1つの疑問が生じる。
アパレント・アトムの怪人は、啓太から人間らしい行動をするよう厳命されている。
なのになぜ彼女らは朱鷺を盾にすることができたのだろうか?
その答えは簡単。朱鷺に限ってはこれは非人道的行為に当たらないからだ。

「―――?」

最初にそのことに気が付いたのはエルカイザー。
一刀両断するつもりで放った斬撃が、身体半ばあたりで止まってしまったことに疑問を覚えたのだ。
思ったより身体の硬い怪人だったのか?
エルカイザーはそう思いながら刀を引き抜こうとした。が、抜けない。
これはいったいどうしたことか?
わずかに心に浮かんだ疑問が動揺に変わったとき、エルカイザーは信じられない光景を目の当たりにした。

「いっ・・・たぁ〜いっ!ひどいっ!ひどいよ、みどりちゃんっ!いきなり人を盾にするなんてぇ〜っ!!」
「なっ・・・!?」

何と身体を半分まで切り裂かれたはずの朱鷺が、大声を上げてみどりに文句を言い始めたのだ。
いくら途中で止まったとは言え、左胸・・・すなわち心臓は間違いなく分割されるように斬った。
間違いなく致命傷。どんなにしぶとい怪人でも、1分以内に絶命するレベルの傷。
今みたいに誰かに文句を言うような軽い傷ではないはずだ。
もしかして今目の前にいる朱鷺は本体ではなく、傀儡か何か・・・?
しかしそれをゆっくり考えさせるほど、啓太の怪人は甘くはなかった。
斬られた朱鷺の背後から、蒼がエルカイザーに銃口を突きつけたのだ。
先制攻撃が一転、ピンチに変わったエルカイザーはとっさに朱鷺を蹴って我が身を守る。
蹴られた衝撃で吹っ飛ばされた朱鷺の身体は、背後の蒼たちにぶつかって銃口をそらす。
しかも蹴り飛ばしたおかげで苦戦していた刀の抜き取りにも成功した。
だが相手は朱鷺たち3人だけではない。
彼女らの師匠、または先輩にあたるエレメンタル・ガーディアンの3人はそれをかわして次の攻撃に入っていた。

「ファイアーショット!」
「アクアボムっ!」
「サンダーアローっ!」

3人の手にした武器からそれぞれ炎・水・雷の3つの弾丸、もしくは矢が放たれる。
炎と水は1発だが弾は大きめ。雷は他の2つに比べ小さい分、数が多い。
さすがのエルカイザーも窮地をしのいだ直後ではこれらを全部防ぎきるのは難しい。
バック転でよけつつ、素早く距離を取る。
エレメンタルの3人が攻撃している間に新入り3人も態勢を整え、ファーストコンタクトは終わりとなった。
電光石火の激しい攻防戦であった。

――――

その頃。啓太側のほうは緊張と混乱で今にも破裂しそうな空気が漂っていた。
無理もない。安穏と暮らしていた一般人からすれば、いきなり目の前で人がナイフで刺され。
挙句刺した人間は正義の味方を名乗って、目の前の男を凶悪犯罪者の代名詞『怪人』だと言うのだから。
事態が呑み込めない生徒たちは何が正しくて、何を信じればいいのか、判断につきかねている状況だった。

(くそっ!いったい何がどうなっているんだ!?なんで永遠が牛沢を刺すんだよ・・・っ!?)

啓太は直純に守られながら、そう悪態をつきたくなるのを必死にこらえていた。
もしそれを口にすれば、張りつめた空気は破裂し、大パニックを引き起こしかねないから。
それは組織の長として日々、夢たちに鍛えられた賜物であった。
だが啓太にできることはせいぜいそれくらいだった。
未熟者のその頭ではパニックを起こさないようにするのが精いっぱいで、なぜ永遠が牛沢を刺したのか見当もつかない。
一方、刺された牛沢、啓太を護衛する直純も窮地を迎えていた。
ここでトチ狂った永遠を危険要因として排除することは容易だ。
2人は戦闘型の怪人で、相手は通信型の怪人なのだから。
しかしそれをすれば周囲のギャラリーに自分たちが悪の組織の人間であると教えてしまうことになる。
そうなればまず間違いなく啓太が危険にさらされる。それは絶対に避けなければならない。
かと言って逃げても永遠の言い分を認め、啓太を危険にさらすことになってしまう。
1番いいのは自分たちから動かず、援軍に助けてもらうことなのだが・・・。
エレメンタルたちメイド軍団はエルカイザーの相手に出払ってしまっている。
時間稼ぎしようにも永遠は待つ様子もないし、牛沢の傷がそれを許さない。

(不意打ちとは言え、サウンドナイフを刺されたのはまずかったな。血が止まる気配がまるでない。
 さすがは我がアパレント・アトムの開発部と言ったところか・・・!)

啓太の意向により人間の姿での戦いを強いられているアパレント・アトムの怪人たちは、その強さを維持すべく、日々試行錯誤を繰り返している。
そのいち手段としてもっともポピュラーな手段の1つが、武器による強化である。
武器1つ身に着けるだけで簡単に強くなれるとして、アパレントの怪人は何かしらの装備をしている。

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