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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 122

幸い、ここは前線のような激しい戦いは起こっていない。
しかしおそらくそこから先は本物の戦場が待っていることだろう。
大学での惨劇すらお遊びと思えるような、そんな残酷な現実が。
だからこそ、啓太は操にムリを言って表に出てもらい、こうしてキスを交わしていたのだ。
心を鎮め、落ち着け。想像もつかない最悪の展開に対応できるように。
怪人という人材に恵まれた啓太は、本人が思っている以上に成長をしていた。
彼は操とのキスを済ませると、彼女を再び体内に戻して今後自分たちが何をしていくべきな
のかを確認する。

「・・・よし。これからオレたちはあのメイド喫茶から基地に戻り、夢たちと合流する。
 できるかぎり基地に敵が来ないうちに片づけるのがベストだが・・・最悪、基地を捨てて逃げることも視野に入れておくからな」
(妥当な判断だと思います。しかし・・・本当によろしかったのですか?)
「あん?何がだ?」
(自ら基地に戻ることが、です。
 クロック様たちならば、啓太様の安全を第一に考え、どこかで身をひそめていてほしいと願われるのでは?)
「・・・だろうな。でもそれはアイツらの都合だ。
 オレの都合の中には、基地にいるなしに関わらず、助けなきゃいけない連中なんだよ。
 そのためにも、『できる限りの力を貸してくれよ』?」
(強制されるまでもありません。啓太様の願いをかなえるために全力を尽くしましょう。
 そのかわり、私にもちゃんと御寵愛を下さいませね?)

それは本心か。あるいはオレの喜びそうな言葉を並べただけなのか。
操はそれきり何も言わなくなった。
どうやら完全に啓太のサポートに回れるよう、集中モードに入ったらしい。
人間らしい言葉に啓太は思わず苦笑する。
そしてついに啓太の基地帰還、そのラストスパートが始まろうとしていた。
と言ってもその侵入は極めて静かなものだった。
何しろ戦いの最前線へ通じているとは言え、その入り口はただのファミレスだ。
ヘタに騒いでよけいなトラブルを持ち込むわけにはいかない。
もっとも、そこで働いている地上勤務の怪人たちには十分な破壊力があったようだが。
「あ、いらっしゃま・・・せ?」
「・・・っ!?け、けけ、けけけけ、けい、けいけいけ・・・ふぐッ!?」
「ば、バカっ!?何を口走ろうとしてんの・・・よぼッ!?」

客を迎えようとした怪人ウエイトレスが固まり。
それに気づいた別の怪人ウエイトレスが、うっかりオレの名前を口にしようとして同僚からの腹パンで黙らせられたり。
さらに同僚の口を封じた怪人ウエイトレスもまた、別の同僚に力ずくで黙らせられるという、何ともカオスな状況が出来上がる。
本音は大声を上げて驚きたいだろうに。
殴られた痛みに怒ったり、悶えたりしたいだろうに。
冷や汗や脂汗を流しながら、何事もなかったかのように啓太を接客するその姿は、まさにプロフェッショナルだった。
もちろん啓太だってそのあたりはよくわかってるから、表向きはただの客のふりをして会話を続ける。

「お・・・お客様?お1人でございますか?」
「いや、後から連れが来る予定なんだ。
 そいつ、たばこを吸うから喫煙席をお願いしたいんだが」
「・・・っ!かしこまりました。それではこちらにどうぞ〜」

何気ない会話。しかし啓太の返答に何かを察したウエイトレスは、表面上は笑顔で主人を店内に案内する。
ちなみにこの店は全面禁煙である。
啓太はこうしてうまく事務所まで案内してもらうと、そこではいた店の最高責任者が床に片膝ついた体勢で彼の到着を待っていた。


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