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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 98

人形のようになったネットワーク・フェアリー(たち)。
その中央で『機天使』ウリエルは次々と彼らから情報を吸い上げていた。
本部の位置。部隊構成。組織のトップ。ネットワーク・フェアリーたちの知ることすべてを。

「ふ・・・ん?最近売り出し中の組織にしてはずいぶん穴の多い組織だね。
 いくら護衛がついてるからって組織のトップを外に出すだなんて。
 これならみんなに連絡しなくても、ボク1人で大丈夫かな・・・?」

ネットワーク・フェアリーは情報部に所属する怪人である。
しかしだからと言って、それがすべての情報をもっているかと聞かれれば答えは否である。
ウリエルは読み取った情報をもとに足りない部分を推測、展開して戦力分析を図る。
そしてその結果導き出された答えは。

「ボク1人でも行ける・・・かな?でも念には念を入れて、保険をかけておくことにするか。
 いずれは切り捨てられる連中だけど、まだ利用価値はあるし、恩を売っておいてもいいだろ。
 ・・・さて、おまえたち。これから自分たちが何をすべきか、わかっているね?」

ウリエルの問いにネットワーク・フェアリーたちがうつろな表情でうなずく。
今の彼らは啓太率いるアパレント・アトムの怪人ではない。
『機天使』ウリエルに操られる使い捨ての道具であった。
彼らの返事に満足そうにうなずき返したウリエルは、彼らに指示を飛ばす。

「それじゃあ行こうか。おまえたちの組織と、その支配者の首を取りに、さ―――♪」

――――

そして時間は再び元に戻る。
舞台はエレメンタル・ガーディアン率いるメイド軍団と2代目エルカイザーがぶつかる平穏な町の住宅街。
2代目エルカイザーこと沢渡黒河は、行方不明となっていたエレメンタル・ガーディアンとの遭遇に普段の鉄面皮も忘れて動揺していた。

(エレメンタル・・・ガーディアンだと!?まさか正義の味方を洗脳するとは・・・。
 この街を支配しているのは伊達ではない、というところか・・・?)

だがさすがは伝説の英雄ゴルディアースにその才能を見出されたヒーロー。
時間の経過とともに動揺していた心は見る見るうちに平静さを取り戻していった。
味方であろうが何だろうが、自分の行く手を遮る以上は敵以外の何物でもない。
ならば敵はすべて切り伏せるのみ。
あっという間に心を静めた黒河の身体が、黒い光に覆われていく。
その光が消え去ったとき、そこに立っていたのは警官『沢渡黒河』ではなく、正義の味方『2代目斬魔大帝エルカイザー』その人であった。
さあ悪を滅しようと右手を得物に伸ばしかけたその時だった。
湖面のように落ち着きを取り戻した心に新たな波紋を呼び起こす小石が投げ入れられた。
それは差出人不明の連絡メール。書かれていた内容は以下の通りであった。

『君の探している組織の首領、初代のかたきは大学にいる。
 かたき討ちの手筈はこちらで整えるので、そちらは安心して正義を行使するべし。
                               ――――おせっかいな支援者より』

そのメールを見たとき、2代目は動揺を相手に悟られないようにするのに必死だった。
何しろ正義の味方に通信しただけでなく、こちらの状況、目的まで正確に知っていたのだから。
この『おせっかいな支援者』と名乗るものが正義の味方の関係者であることは間違いない。
でなければ通信してくるなんてできないのだから。
だが―――なぜこの人物は自分の正体を隠す?
なぜわざわざ自分に手柄をよこすようなマネをする?
疑問は疑問を呼び、2代目エルカイザーの心に次々と波紋を立てていく。
しかしエルカイザーはすぐにそれ以上考えることをやめた。
今考えるべきなのは、そんなことではないからだ。
今エルカイザーのなすべきこと。それは目の前の障害を排し、初代のやり残した仕事を完遂することだ。
それが2代目の生きる理由。存在する理由であった。
再び落ち着きを取り戻した2代目は、どこからともなく、手品のように長刀を取り出して戦闘態勢を取る。
そして相手が口を開くより先に最速の一撃を食らわせるべく、一気にその間合いを詰めた。

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