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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 96

牛沢はそれを見て少しだけホッとした。
もし啓太がよけいなことを口走れば、啓太はもう二度とこの学校に通えない。
それどころか表社会で生きていけなくなる。
しかし永遠はそんなわずかな安堵を叩き潰すような言葉を口にする。

「待っていてね、啓太君?今この怪人を殺してあげるから」
「「・・・っ!?」」

その言葉に2人は絶句する。人間のケンカでごまかしのきく範囲を自分から飛び越えたのだ。
事実、今の永遠の発言でギャラリーは牛沢のことを怪人かもしれないと騒ぎ始めている。

「・・・っ、永遠ぁッ!貴様、いったい何のつもりだぁッ!?」
「何?そんなの決まってるじゃないか」

牛沢の質問に永遠は血まみれのナイフを突き付け、こう答えた。

「この学校に紛れた怪人を、正義の味方のぼくが処分する。当たり前のことだろ?」
「「・・・っ!?」」

その言葉に今度こそ2人は絶句する。正義の味方?
何を言っている?目の前の永遠という人物は啓太の所有物、怪人のはずだ。
それが味方に刃を向けた挙句、正義の味方を名乗るなど。
反逆以外の何物でもない行為。しかしそれだけに解せない。
怪人は主人に逆らえない道具。それがなぜ主人に弓引く?
その答えは啓太たちが知らないところで進行していた。現在進行形で。無邪気な悪意とともに。
――――

ここで時間は少しさかのぼる。
話の舞台は啓太のいる大学でも、2代目エルカイザー黒河のいる道路でもない。
三方町を駆け抜けるいくつもの影・・・永遠と別行動をとったネットワーク・フェアリーたちである。
今彼ら(または彼女ら)は2代目エルカイザーにやられた死体を秘密裏に処理するべく、本部に帰還しようとしているところであった。
改めて説明するが、彼らネットワーク・フェアリーは単体ではなく群体の怪人である。
そのため1人が死んだところで、彼らにしてみれば手傷を負ったくらいのダメージにしかならない。
とは言え、彼らは主人である啓太から勝手に死んではならないと厳命されている。
そのため彼らはこうして啓太にバレる前に姿態を処分するべく、町を疾走していたのである。
この時の彼らは、もしかしたら動揺していたのかもしれない。
彼らはそんなつもりなどなかったかもしれない。
しかし結果として主人である啓太の命令を破り、あまつさえそれを隠蔽しようとする後ろめたさと恐怖が彼らの心をわずかにでも乱したのかもしれない。
もし彼らが正直に啓太に事のすべてを告白していれば、あのような事態にはならなかったかもしれない。
だがすべてはもう遅すぎた。

ジッ・・・!

『!?』

その始まりはネットワーク・フェアリー全員が同時に感じたノイズ。
まるで自分の身体の一部を無理やり引き剥がされたような感覚に、彼らは一斉に足を止めた。
そして気づく。いつのまにか自分たちネットワーク・フェアリーの姿が1人足りなくなっていることを。
それに気づいたネットワーク・フェアリーたちはすぐさまいなくなった自分を探し始めた。

ゴオッ・・・!

「・・・ッ!?」

するとどこからともなく白い塊が飛んできて、ネットワーク・フェアリーの1人を捕獲する。
それが犯人であることは考えるまでもなかった。
飛んできた白い物体は獲物を捕まえたまま、ヒュルヒュルとあるビルの屋上に向かってへ飛んでいく。

ガシャンッ!

「はい、2人目GETぉ〜っ!」

その先にいたのは無骨で巨大なロボットのような敵だった。
その両手には捕えられたネットワーク・フェアリーが脱出しようともがいている。
敵の存在を確認したネットワーク・フェアリーたちの行動は素早かった。
各々懐に忍ばせていた開発部特製のナイフや銃を取り出すと、問答無用で襲いかかったのだ。

ガンガンガンッ!ガキンッ!ガキガキィンッ!

「・・・っ!?」
「なっ・・・!?全方位型エネルギーシールドっ!?」

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