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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 95


後輩メイドたちが力強く返事をするのを見てエレメンタル・ガーディアンの3人は思わず笑顔がこぼれる。

「しっかしおかしな話だよね!悪の組織のボクらが、まわりの人間の心配するなんて、さ!」
「でも意外と違和感は感じませんわね・・・。ボス(啓太様)の影響かしら?」
「とりあえずそれは後で考えましょう!今は目の前の敵を何とかすることが先決です!」

彼女たちは知らない。
今感じているのは正義の味方だったころの記憶の残滓だということを。
今の自分は組織の最高幹部の1人、クロックの洗脳によってあるものだということを。
そしてそれがエルカイザーに少なからず、衝撃と動揺を与えていることを・・・!

――――

同時刻。啓太のいる学校でも異変がじわりじわりと侵食しつつあった。
だがそれに気づく者は誰もいない。
まるで肉食獣が襲いかかるその瞬間まで、獲物がその存在に気づくことがないように。

「・・・そろそろエレメンタルの連中が敵と遭遇している頃、か。
 交渉はうまくいくと思うか、永遠?」

授業が終わり、啓太がトイレに行っている間。
護衛の牛沢は相方の永遠に質問をしていた。
普段なら絶対に声に出さない会話であるが、今はここにいるのはアパレント・アトムの関係者のみ。
牛沢たちは啓太に聞こえないくらいの声を条件に会話をしていた。

「・・・おそらくは無理だろうな。
 偶然かどうかわからんが、相手は問答無用で私の1人を殺すような腕の持ち主。
 おまけにしつこくここに足を運んで調査をしていることから、簡単にあきらめるとは思えない」
「むう。啓太様には血なまぐさいことに関わってほしくなかったんだがなぁ」
「何を青臭いことを。啓太様はすでに我々とともに生きることを決意されたのだぞ。
 おまえはその意思をないがしろにするつもりか?」
「あ、いや、そんなつもりはないんだがな。
 久しぶりに一般人の生活を楽しまれている啓太様を見ると、どうにもなぁ・・・」

煮え切らない態度の牛沢に、永遠はため息をついた。

「まったく・・・そんなでは啓太様の護衛なんぞまかせられんぞ?
 ちょっと頭を冷やしてきたらどうだ」
「何を言う?ワシは少し啓太様のことを考えていただけだ。
 任務を全うすることに迷いなどあるはずが・・・?」

ない、と最後まで言うことはできなかった。
なぜなら牛沢の脇腹には1本のナイフが深々と突き立てられていたからだ。
怪人である自分にこうも簡単に致命傷を受けたことにも驚いたが、何よりも驚かせたのはそのナイフを突き立てたのが相方の永遠であったことだった。

「啓太様のことを考えているという時点でスキだらけなんだよ、牛沢。
 啓太様のことは私に任せ、おまえはゆっくり眠ってろ。目覚めることなく永遠に、な」
「ぐっ・・・おおぉッ!!」

しかし牛沢とて怪人。そう簡単にやられるわけにはいかない。
牛沢は今にも片膝つきそうな身体に鞭うち、豪拳を振るう。

ガシャアンッ!

トイレの入り口で大暴れしたためドアに当たって外の壁まで吹っ飛ばされる。
しかしその中に永遠の姿はない。ひらりとかわしてよけたのだ。
突然の乱行に上がる悲鳴。ざわつく現場。
そして振り落ちるガラスの破片を背景にゆっくりと着地する永遠。
その姿は美しく、ちょっとした映画のワンシーンのようだった。

「な、何っ!?いったい何が・・・牛沢っ!?永遠っ!?」

そんな時事態を聞きつけた啓太が遅まきながらトイレから出てきた。
しかし人前で、それも味方同士が争っている光景に啓太もそれ以上のことが理解できない。
当たり前だ。怪人は主人に逆らえない道具。そのことは啓太でも痛いくらい知っていることなのだから。

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