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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 94


(さあ、早くとっとと帰ってくれ・・・!)

祈るような気持ちで相手の出方を待つ。
これは彼女たち啓太護衛組にとって最終手段・・・いいや最終通告とも言えるものだった。
もしこれで相手が拒否するようならば、こちらも実力行使に出るしかない。
その場合、こちらが負けずともかなりの被害が出ることを覚悟しなければならない。
重い沈黙があたりを包んでいく。
そしてついに黒河をその口を開いた。

「おまえたちは2つ勘違いをしている」
「え?」
「・・・何?」
「―――?」
「1つは自分が『斬魔大帝』エルカイザーであること。
 遠距離攻撃を主武装とするジャスティス・エクスキュージョナーならともかく、接近戦を得意とする私を相手に、その脅しはあまり有効とは言えない」
『―――!!』

その言葉に朱鷺・みどり・蒼と隠れ潜んでいるエレメンタル・ガーディアンの3人は作戦の失敗を悟った。
やるしかない。後は啓太と付近住民に被害が及ばないよう、うまく誘導しなくては。
緊張感が一気に張りつめ、爆弾のように破裂する瞬間が刻一刻と近づいていく。
だがこの時点で彼女たちは忘れていた。
目の前の敵―――エルカイザーは、勘違いを2つしているといったことを。
そして彼女たちが知らず犯した最大のミスが黒河の口から語られた。

「そして2つ目は私が『正義の味方』であるということ。
 確かに私はヒーロー協会に所属しているが、私は正義の味方ではない」
「・・・え?どういうこと?」
「貴様・・・何が言いたい?」

事情を知らない面々が思わず疑問を口にする。口にしてしまった。
それが戦いのゴングになるとも知らずに。

「今の私は『復讐者』だ。目的を果たせるならまわりがどうなろうと知ったことか―――!!」

言い終わるが早いか、黒河ははじかれたように前へと駆け出す。
弾丸のように走る黒河の身体が光に包まれ、警察官から正義の味方・・・否、復讐者へと姿を変えた。
絶妙のタイミングで走り出されたことで、隠れ潜んでいたエレメンタルの3人は不意打ちと援護の機械を同時に失う。
しまったと思った時にはすでに敵は刀をかわいい後輩メイドらに向けて振り下ろそうとしていた。
しかし忘れてはいけない。
初の実践とは言え、彼女らだって怪人の端くれなのだ。

ガキィンッ!

甲高い金属音が閑静な住宅地に響く。
信じられない光景にエルカイザーの眉がかすかに上がる。
みどりが素手でエルカイザーの斬撃を止めていたのだ。

(・・・なるほど、暗器内臓型か肉体強化型というわけだな?)

などと冷静に観察するヒマもなく、蒼は右手から、朱鷺は口からレーザーを放つ。
さすがにこれには逃げの一手しかない。
そこにすかさずエレメンタルの魔法攻撃が入り、エルカイザーはやむなく距離を取った。

「ごめん!3人とも大丈夫!?」
「せ、先輩!お、遅すぎッスよぉ!?」
「・・・・・・(コクリ)」
「ダメージ、異常ともになし。大丈夫です」
マイの質問に後輩メイドの3人は三者三様の答えを返す。
3人の元気ぶりにマイたちは心の中で安堵のため息をつく。
彼女らに何かあったら啓太への忠義を果たせない。
何よりかわいい後輩たちへの愛情がそれを許せなかった。

「気を引き締めなさい、3人とも。
 あの男、正義の味方の中でもかなりイレギュラーなタイプみたいですわよ・・・!」
「まずは近隣の住民に被害が及ばないよう、誘導して近くの林に連れ込みます。
 最初からかなりの重労働ですが、絶対に気を抜かないで!」
「「「はい!!!」」」

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