世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 80
情報の改ざんの1つでもやっておきたいところだが、時間がない。
ラフィ(エトリアル)は涙を呑んで必要な情報をまとめ、席を立った。
「すみません、どうもありがとうございました〜」
「遅かったですね。何か、あったのですか?」
「え?い、いえ何分慣れていないものでしたから・・・。
ご迷惑をおかけしてどうもすみません」
「気をつけてください。
あまり仕事が遅いようだと、私たちのポイントにも響きますから」
「は、はいっ。ホントに申し訳ありませんでしたっ!」
ラフィ(エトリアル)はそう言うと、逃げるようにその場を後にした。
自分を呼び止めたタコ怪人から、何とも言えない危険なオーラを感じ取ったのだ。
(あ、危なかった・・・!あのままあそこにいたら、何をされていたか・・・!
それにあのタコ女。
私の仕事が遅いって言ってたけど、ここの怪人ってそんなに優秀なのかな・・・?)
潜入を主な任務とする彼女は、どんな仕事でも満遍なくこなすことができる。
それを『遅い』と言うからには、よほどその仕事ができることを意味する。
他の組織ではやりすぎてほめられたことすらあったと言うのに、まるで理解できない状況だった。
まぁ無理もない。アパレントで働いている怪人たちは、少しでもポイントを稼ぐため、日夜がんばっているのだ。
ちょっと仕事ができるだけで満足するヤツと、できなくても毎日努力するヤツではどうしても差が開いてしまうもののだった。
そんな事情を知らないラフィ(エトリアル)は、急いでルシフェルとの合流に向かった。
ルシフェルの居場所は予想以上にわかりやすかった。
彼女の居場所に近くなるに連れ、通路に切り傷や焼け跡、血痕などの破壊の痕跡が目立つようになり。
すれ違う人もだんだんケガ人が多くなっていた。
目的地であるルシフェルの部屋付近は、もう野戦病院さながらの状態になっていた。
そこかしこで怨嗟とうめき声が響き、医療部らしき怪人たちが忙しそうに駆け回る。
ルシフェルの敵意を持つ連中がシメようとして、返り討ちにされたのだろう。
(ルシフェルさんにケンカを売るなんて、怖いもの知らずだな〜。
まったくよくこれだけの数が生き残れたもんだよ)
ラフィ(エトリアル)は治療を受ける怪人たちを見て、思わず同情と敬意の念を抱いた。
ルシフェルという女はヒーロー協会にいたときから、力加減や情け容赦というものを知らない女だった。
『実践に勝る経験なし』をスローガンに、何でも力ずくで何でも覚えさせた。
実戦訓練では何度も死線をさまよったし、ちょっとでもミスをすれば鉄拳が飛んできて、制裁が下される。