PiPi's World 投稿小説

世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

の最初へ
 67
 69
の最後へ

世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 69

すると鬼瓦は少しの間沈黙すると。
ジョッキに半分ほど残っていたビールを、一息で全て飲み干した。

「アドヴァンスド・ヒーローのことで、おまえの見解が聞きたい。
 おまえのことだ、どうせ全て知ってるんだろ?」

アドヴァンスド・ヒーローと聞いて今度は山岡が沈黙する。

「・・・なぜ急にアイツらの話を出す?
 アイツらは次世代を担うヒーローとして期待されてる。
 問題は何もないはずだろう」
「大アリだッ!?」

ダンッ!

山岡の言葉に、鬼瓦がテーブルに空になったジョッキをたたきつけた。
ジョッキが割れなかったのは、感情的になりつつもちゃんとコントロールしている証拠である。
しかし周囲の客の目を集めてしまうのばかりは仕方がない。

「次世代ヒーローだか何だか知らんが、アイツら自分の力に振り回されて心のほうがついていっていない!
 あれではヒーローどころか、怪人以上の脅威にもなりかねん!
 大塔寺はいったい何を考えているんだっ!?」
「そう責めるな。
 アイツもアイツで考えているところがあるんだろう。
 でなきゃあんなマネをするわけがない」

その言葉に鬼瓦警部は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
そこには鬼瓦と山岡の2人にしかわからない、痛みのようなものが垣間見れた。

「・・・でも今のアイツのやり方はあまりにも危うすぎる。
 『力』ばかりを優先しているせいで、慢心した正義の味方が協会内にあふれかえっているんだ。
 このまま連中が増長し続ければ、正義とは名ばかりの腐敗組織になりかねんぞ」
「・・・確かに連中の存在は危険だ。
 だからこそ、私が影で動いているのだろう?」

その言葉に鬼瓦は黙ったまま、空になったジョッキを見つめる。
そして開いた口からつむがれた言葉は、一度聞いたはずの質問。

「もう一度、聞きたい。
 おまえは・・・アドヴァンスド・ヒーローのことをどう思っている?」
「悪の組織への牽制としては、これ以上ないほどの『力』の持ち主たちだろう。
 しかし強すぎる『力』は持て余し、新たな火種の材料になるとも限らない。
 各国が使われない核兵器で自国の強さをアピールしていたように、な」

何か問題があるようなら私が動く。
山岡は言外にそう言っていた。
つまり彼も鬼瓦と同様、諸手を挙げてアドヴァンスドの存在を受け入れているわけではないのだ。

SNSでこの小説を紹介

SFの他のリレー小説

こちらから小説を探す