世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 67
カキカキカキン!
ジュラルミンハリセンで頭を殴る音が響く。
「きゃん!」
「痛いです・・・」
「うう・・・」
エレメンタル・ガーディアンの3人が涙目になって頭に手を当てている。
「まったくお前達は・・・色ボケ娘は嫌いじゃないが、色ボケするなら時と場所を選べ!このマンションには総帥護衛隊の男性怪人も何人か住んでいるんだぞ!」
「やれやれ、啓太は相変わらずだな。」
啓太とエレメンタル・ガーディアンのやりとりをみながら、リリスこと小森雅は啓太をこっそり見張っていた。
実はクロックに頼まれて、彼女は啓太の身辺を密かに護衛していた。
アパレントの諜報を一手に引き受ける情報部の最高責任者の雅がわざわざ護衛に出てるのはというと、啓太が心配だから部下に内緒で来たのであった。
「頃合いを見計らって啓太にくっ付くか。しかし、啓太は何を企んでるんだ?
そっちも興味がある。」
雅の疑問はもっともだ。
最近の啓太は組織の長としての自覚を持ち始め、実力不足ながらもみなに迷惑をかけないよう、一生懸命努力していた。
そんな彼が危険いっぱいの地上に出てくるなんて、ありえない。
雅の好奇心は激しく刺激されていた。
「・・・何か問題があったら連れ戻そうかと思ったが、
もうちょっとだけ様子を見てみるか」
雅に監視されているとも知らない啓太は、頭を押さえる不出来なメイドたちを見ながら、同じように迫ってきた鈴と空のことを思い出す。
(そう言えばあの時も、アイツら仲間たちを助けてくれるせめてものお礼にとか言って、迫ってきてたっけ・・・)
いきなり凶悪犯罪の代名詞である悪の組織から仲間を助け出してと言われたときは、冗談じゃないと思った。
正直今でもどこかの組織と戦ったりするときはやりたくないというのが本音だ。
しかも最近は同盟結成のための会談出席なんてこともあり、啓太の心が休まるときはなかなかない。
でも啓太が戦いを嫌がったり、緊張したりする理由はあの頃とは少しずつ変わってきていて―――。
そこまで考えて、啓太は自分の考えに間違いはなかったことを実感する。
(・・・よし。この調子でいろんなところに行ってみよう。
そうすればこれから自分のすべきこと、やりたいことがわかるはずだ)
グウウゥゥウゥ・・・ッ。
そこで急におなかの虫が鳴り始めた。
場の空気を読まない自分の腹に苦笑しつつ、啓太はそれで次の目的地を決定するのであった。