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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 63

周囲でどたばたと治療行為に動く怪人たちの存在が、さらに啓太の心を苦しめる。
あまりのふがいなさ、情けなさにいたたまれなくなってその場を立ち去ろうとしたその時だ。

「け、啓太様・・・。そんなに、気に病む、こと、は、ありません、よ・・・?」

何とか地獄のトレーニングで生き残った夢が、ボロボロの身体に鞭打ち、啓太に近づいてきた。
全身擦り傷・切り傷だらけ、精も根も尽き果て、今にも倒れてしまいそうな様子だ。

「ば、バカっ!?何やってんだ、そんな身体で無茶するなっ!?」

満身創痍の姿に、さすがの啓太も鬱になっていたことも忘れ、あわてて介護に入る。
啓太の温かい胸に迎えられ、夢は今にも昇天しそうになる心を必死につなぎとめながら、啓太の不安を払拭しようとする。
それはまさに啓太への想いのなせるささやかな奇跡であった。
そして、夢は啓太が予想もしないような言葉を口にした。
「人間・・・・ではない、別の・・・・存在・・・・宇宙人に、ついて、考えたことは、あります・・か。」
抱きしめた夢の言葉に驚きながらも、啓太は答える。
「宇宙人・・・・。人間ならざる知的生命体と、いうことか?」
「はい・・・・改造で、私達や啓太様が人間・・から、乖離・・・・するといっても、何も・・・・人間だけが、ただ1つの生き方では・・・・ありません。人間の、心が、あるかぎり・・・人は人・・・・。」
そこまでを言うと、ふっと夢の身体から力が抜けた。
啓太は一瞬死んだのかとあせったが、ただ意識を失っただけらしい。
夢の安らかな寝息を聞いて、思わず安堵のため息をついた。
見ればそこかしこに倒れているアパレント・アトムの怪人たち。
啓太の忠誠心ゆえにルシフェルへの復讐を狙うもの。
試験に落ちた身の上でも、あきらめきれずに力を求めるもの。
啓太への命令を守るために、安易な改造の道を捨て限界まで身体を鍛える苦行の道を歩むもの。
形こそさまざまだが、結局みな啓太のことを思っての行動だ。
正直そこまでやってもらえるのはありがたい限りだ。
しかし自分が求めていたものは、そんなものだったか?
啓太はそう思うのだ。
確かに啓太は女の子に囲まれて豪遊生活したいとか、考えたことがある。
だがこんな生き死にのかかった刺激的過ぎる生活なんて望んでいない。
そこでふと啓太は気がついた。
一体なんで自分はこんな生活を送ることになった?
そこに何か悩みを解決するヒントがあるのではないか?
啓太は事ここにいたってようやく一条の光を見出したのであった。

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