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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 62

バタン!
訓練所の扉が勢いよく開き、糸田親子を連れた啓太が乗り込んできた・・・のだが。
山積みになった怪人達の姿を見て、みるみる驚愕の表情を浮かべ・・・・・
次の瞬間、憤怒の表情になって大声を上げた。
「これは何だルシフェル!お前は教官か?!それとも壊し屋か?それとも我々を内部崩壊させる偽降の計か?!」
憤怒する啓太に、わずかに眉をひそめるとルシフェルは平然たる口調で答えた。
「ずいぶんなご挨拶だな総統殿。私に執拗にこいつらが時も場所も選ばずに襲い掛かってきたのを撃破しただけだぞ?」
「何だと?」
「私を貶すより奴らの心配をしてやったらどうだ。彼ら彼女らは肉体の力を限界まで引き出して強くなろうと努力しているのだぞ。何の為に?そう、お前の為だよ。総統殿!」
ルシフェルは最後は叩きつけるように言った。
啓太に続いてやってきた糸田親子は口論する2人をよそに、倒れている怪人達の手当てにてんてこまいだ。
ルシフェルが選んだ精鋭も、仕返し志願のザコも関係ない。等しくファミリーの一員なのだ。
中には男性怪人も数名含まれていた。啓太が大学などへ外出する時の為に選ばれた護衛任務の怪人たちだ。
さすがに外界で女性ばかりを回りに並べて歩いていては周囲から浮いてしまう。
だからこそ彼らが選ばれたのだ。
総統護衛隊員として選ばれた彼らはそれに喜びと誇りを抱き、ルシフェルの猛訓練に必死に取り組んでいるのだ。
「・・・・・・ところで、訓練だけか?強化改造もしてやったほうがより戦死率も下がるだろうよ。」
啓太はほろ苦い表情を浮かべた。
まず自分自身、次の週末にはマジカル・バニーによる防御構造の改良手術を受ける手はずになっていたからだ。
他の怪人についても準備が整う来週以降に着手する予定だった。
だが啓太は自分を含め、改造手術する連中に対して内心複雑な思いであった。
確かに改造手術をすれば、普通に鍛えるよりはるかに簡単に大きな力が手に入る。
しかしそれは怪人たちに人間として生きてもらいたいという啓太の考えから大きく外れるものだ。
改造手術をすればするほど、人間ではない、別の存在になることは一般人の価値観を持つ啓太にとって耐え難いものがあった。
とは言え、力がなければ何もできないということもまた、啓太もよく理解している。
どんなにきれいごとを並べても、実行できなければ意味はない。
だからこそ自分は役立たずなのではないのか?
啓太はいまだその回答を出せない。
ルシフェルの何気ない質問に対してさえも。

「・・・まぁいい。私がバカどもの相手で少し疲れた。
 休憩がてら、シャワーを浴びさせてもらうぞ」

一向に返事をしない啓太に、ルシフェルは答えなど期待していなかったらしい。
彼女はそう言うとタオルを片手にその場を立ち去った。
自分より年下の少女に何も言えない、言い返せない情けなさに、啓太は黙って立ち尽くすことしかできない。

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