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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。第3部 56


そのわずか数秒後。
啓太のいなくなったトレーニングルームから、大きな爆発音が悲鳴と共に巻き起こったのだった。

――――

2日後。医療部では野戦病院さながらの忙しさに追われていた。
その理由のほとんどはルシフェルの試験に脱落した不合格者と、彼女にケンカを売った身の程知らずたちの末路であった。
ルシフェルの宣言どおり、ボコボコにされた面々は激痛にうめいたり、自分の無力さを嘆いたり、懲りずにリベンジを誓っていたりとさまざまな思いを抱いていた。
そして医療部の奥、特別に用意された個室で1人物思いにふける男がいた。
アパレント・アトム総統、乱宮啓太だ。
彼もまたルシフェルの瓦礫の下敷きとなり、大ケガを負った。
しかしアパレント・アトムの技術力と怪人たちの想い、そしてこれまでの特訓のおかげでベッドで2〜3日寝込む程度で済んだのである。
とは言え、あれだけあっさり、しかもボコボコにやられて何も感じないほど啓太は無能ではない。
意識を取り戻してから、啓太はいろんなことを考えていた。
自分のやってきたこと。その結果。ルシフェルに言われたこと。
自分の気持ち。
たくさんのことを穴のあくまで考えて、ひたすら考え抜いた。
そしてたどり着いた結論は。
あれだけやられて、おめおめと引き下がりたくないということ。
しかし相手の土俵に上がるにはどの道もとても険しく、一朝一夕では絶対にたどり着けないということだった。
ヒーロー協会からの脱走者であるルシフェルを保護し、近くまた大きな戦いが起きるとわかるだけに、その事実はとても残酷であった。
だからと言って、このまま何もしないわけにはいかないし、したくもない。
使い捨てである怪人たちの有能さの壁に、啓太は再び立ち往生することとなったのである。

「啓太様。具合はいかがですか?」

考え悩む啓太の下に、看護士ルックのチェス・ボードの1体が姿を現す。
普段なら16体全員で診察したいところであるが、治療を必要とする怪人たちは山ほどいる。
医療部部長が診察のためだけに来るだけでも、破格の扱いというのが現状だ。

「みんなのおかげでもう大丈夫だ。
 もう退院してもいいんじゃないか?」
「ダメです。
 治ったと言っても、それは大まかな傷だけで細かい傷や受けたダメージはまだ残っているんです。
 それらがなくなるまで、絶対に安静にしていただきます」

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